イベルメクチンに超期待する人が知らない真実 コロナ治療薬?「過熱報道と臨床現場の温度差」

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コロナ治療薬として急速に脚光を浴びている「イベルメクチン(ストロメクトール)」
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首都圏の緊急事態宣言は3月21日まで再延長された。新型コロナウイルスの新規感染者数は、大きく減少しているが、まだ次のステップに進む道筋は見えない。

こうした中、「イベルメクチン」という薬が注目を集めている。海外で新型コロナの予防や治療に高い効果を示したとして、「奇跡の薬」「コロナ特効薬」と一部メディアが称賛。早期承認を求める声が高まり、個人輸入でイベルメクチンを服用する人も急増しているようだ。

盛り上がる「イベルメクチン現象」に対して、新型コロナの治療にあたる医師や医薬品の専門家は危機感を募らせている。それはいったいなぜか?

コロナ治療薬をめぐって、錯綜する情報と診療現場の現実を追った──。

コロナ軽症者の孤独と死の恐怖

「PCR検査の結果は陽性でした。すぐ保健所から連絡がありますので、指示に従ってください」

新型コロナウイルスの感染は電話で告げられた。翌日、筆者は民間の救急車で療養施設のビジネスホテルに運ばれ、隔離生活が始まった。

「コロナはただの風邪」という声をよく聞く。

感染しても大半が無症状で済むからだろう。しかし、私は違っていた。

激しい頭痛と、焼けるような咽頭痛。せきの発作が起きるたび、肺の内側を針で刺されたような痛みが走る。熟睡できない日々が続き、体力と気力が奪われていく。重症化する予感が頭から離れない。

オンライン診療で(といっても電話)医師に症状を伝えると、処方薬がホテルに届いた。それは葛根湯やせき止めなどの一般的な風邪の治療薬。世界的な脅威のコロナに感染しても、そんなものかと唖然とした。

自宅やホテル療養になると、それなりに症状があっても医師の診察は受けられない。朝夕2回、体温と酸素飽和度を看護師に電話で申告するだけ。ほぼ、医療からも隔離された状態になる。

呼吸が苦しいなどの異常を感じたときは、「コロナ119番」に自分で連絡して、助けを呼ぶように保健所から指示された。でも、本当に苦しいときに、電話などできないだろう。この時期、自宅やホテル療養中の人が死亡するケースが続出したが、誰がそうなっても不思議ではない。私は1週間を過ぎると症状が一気に鎮まって、9日間の療養生活で退所した。

次ページ1年間で劇変したコロナの診療現場
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