菅首相、違法接待で「谷脇切り捨て」の罪深さ 懐刀の官僚を更迭、避けられぬ首相の政治責任

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3月5日、参院予算委員会で答弁する総務省の谷脇康彦総務審議官(当時、右手前、写真:時事)

菅義偉首相の寵愛を受けて出世街道をばく進してきた総務省の谷脇康彦氏(60)が3月8日、利害関係のあるNTTや東北新社からの違法接待を受けていたとして、省内ナンバー2である総務審議官の職を追われた。

次期事務次官間違いなしとされた谷脇氏の転落で、菅首相肝いりの携帯電話料金引き下げなどへの悪影響も避けられない。通信放送行政における改革派を失った総務省の地盤沈下にもつながりかねず、「谷脇氏退場なら国家的損失」(関係者)との声も出ている。

1人6万円超の飲食接待も

菅首相自身にとっても懐刀を失ったのは手痛い打撃で、「天領」とされる総務省への影響力も低下しかねない。しかも、違法接待に首相の長男が絡んでいたことで、「罪作りの原因は菅首相」(立憲民主党)などの批判が噴出しており、菅首相の政治責任も厳しく問われる。

谷脇氏の事実上の更迭処分が発表されたのは、参院予算委員会集中審議の直前の8日朝のことだった。人事権者の武田良太総務相が「前回の調査で倫理法令に違反する行為をほかに行っていないか、再三確認したにもかかわらず、新たな違反が疑われる行為が確認されたことは、甚だ遺憾」と厳しい口調で説明した。

総務省は2月24日、衛星放送関連会社の東北新社から2018~2020年に計4回の接待を受けたなどとして、谷脇氏ら11人の幹部職員の減給や戒告などの処分を決定。谷脇氏はその中で一番重い減給処分を受けていた。ただ、その際の調査で谷脇氏はNTTからの接待を申告せず、総務省も調査漏れがあったことを認めた。

総務省が事業計画の認可などの権限を持つNTTは、同省にとってまさに利害関係者。同社の子会社であるNTTドコモも、同省が所管する電波法によって、携帯電波の周波数などが割り当てられている。

NTT幹部らとの会食が判明した後も谷脇氏が申告しなかったのは、応分の負担があったからだと説明していた。しかし、総務省が伝票などを調査・確認した結果、判明した2018年(2回)と2020年(1回)の会食で、谷脇氏が5000円を自己負担したのは2020年の1回だけ。他の2回はNTT側がすべて支払い、飲食費が1人あたり6万円を超えるケースもあった。

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