埼玉の弁護士はなぜ株主提案に踏み切ったのか ラクオリア創薬に経営陣の大幅刷新を求める

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ラクオリア創薬の大株主、柿沼佑一氏は「会社のやり方に次第に疑問を感じることが多くなってきた」と訴える(撮影:風間仁一郎)
ラクオリア創薬の筆頭株主である弁護士の柿沼佑一氏は1月、谷直樹社長を含む現経営陣の退任と、自ら提案する新しい取締役候補の選任などを求める株主提案を行った。
株主提案はこれまで、企業を分析する能力のある企業や機関投資家が行うのが通例だった。今回のように、個人株主が自ら株主提案を行い、企業側に経営陣の刷新や経営再建に挑むのは極めて珍しい。
柿沼氏はなぜ株主提案に踏み切ったのか。提案に至った経緯や狙い、ラクオリアの経営再建策などについて、柿沼氏と新任取締役候補の武内博文氏に聞いた(インタビューは2月10日に行った)。

異例の株主提案の理由

――個人株主による株主提案は日本では異例のことです。株主提案に至った経緯や理由などを聞かせてください。

柿沼 私がラクオリア創薬に投資したのは、2017年1月ごろのこと。同年7月に、業界紙の報道で谷社長が「直近で200億円の時価総額を、2020年ごろまでに1000億円を目指す。2019年に黒字化を狙うが、黒字転換は通過点」と話しているのを知った。

当時のラクオリアの開発パイプライン(新薬候補群)は非常に魅力的だった。消化器薬の「テゴプラザン」や動物薬の「ガリプラント」(いずれも2017年以降に承認・発売)に加えて、独自のイオンチャネル創薬群(細胞膜にある膜たんぱく質の一種で、生体内で重要な働きをするイオンチャネルを標的にした医薬品)もあった。うまくいけば、時価総額1000億円は達成できると思っていた。

だが、説明会資料に目を通し、株主総会や個人投資家向けセミナーに足を運ぶうちに、会社のやり方に疑問を感じることが多くなってきた。

――疑問とは?

柿沼 (医薬品開発をするために)ラクオリアの新規化合物の薬効評価をしていた武田薬品工業が、2018年にその化合物の評価をやめた。ラクオリアの経営陣は「非常に有力なものなので開発には自信がある」と強気の姿勢だったが、その後、この開発が進捗しているようには見えない。

2018年1月に発表した中国の製薬企業ZTEとの医薬品共同開発をする合弁会社設立も、(米中対立のさなかでも)「問題はない」という回答だった。谷社長は「どんな形でもスキームを生かして合弁はやっていく」と説明していたが、同年10月には合弁解消を発表した。

業績は、2019年12月期は営業赤字。続く2020年12月期も当初は大丈夫だと言っていたのに、二度にわたって業績を下方修正した。「営業黒字の必達」という株主との約束は2年連続で反故にされてしまった。

(同業の)アンジェスが新型コロナワクチンで頑張っているのに、ラクオリアには新型コロナ関連の開発の動きもない。6月ごろになると、私の運営するブログにラクオリアの株主から、「なんで柿沼は動かないんだ」という声さえ届く始末だ。

東洋経済プラスの連載「株主の叛乱」では、この記事の続きを無料でお読みいただけます。連載ではコーポレートガバナンスにまつわる課題を取り上げています。
埼玉の弁護士が「異例の株主提案」に踏み切る事情
インタビュー/柿沼佑一弁護士「きちんと経営できればラクオリアは飛躍する」
インタビュー/ラクオリア創薬「製薬会社はそんなに甘い商売ではない」
大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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