父母と心中図った47歳娘の窮地に見えた問題

親孝行が親殺しに結びついてしまった悲劇

親の介護に疲れる、子の深刻な事態(写真:buritora/PIXTA)
超長寿国、日本。人生100年時代と言われて久しいですが、その分高齢化も進み、お金・介護・認知症などの問題はより深刻になってきています。現代において子は、介護という地獄を受け入れるほどの恩を親から受けていると言えるのでしょうか。
宗教学者で作家の島田裕巳さんによる幻冬舎新書『もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない』より、本音でラクになる生き方「親捨て」について、一部を抜粋してご紹介します。

81歳と74歳の夫婦が遺体で発見。逮捕されたのは実の娘

親は、捨てる──。

今や、そうした時代が訪れている。それほど事態は深刻だ。

「幻冬舎plus」(運営:株式会社 幻冬舎)の提供記事です

それを証明する事件や事態が次々と起こっているが、これもその一例である。

それは、「利根川心中(とねがわしんじゅう)」と名付けられた事件である。

利根川心中などと呼ばれると、浄瑠璃や歌舞伎の「曽根崎(そねざき)心中」など、男女の愛欲の果ての自殺行を思い起こす。だが、利根川心中はそんなものではない。『週刊朝日』(2015年12月11日号)誌の報道によれば、事件の顛末は次のようなものだった。

2015年11月22日、群馬県在住の78歳の男性が、趣味の鴨猟のために利根川に出かけたときのことだ。

川に、白髪で白い服を着た女性が横を向いて浮かんでいるのを目撃した。男性は、当然110番通報した。

遺体の身元は、その場所から7キロメートルほど離れた埼玉県深谷市に住んでいた81歳の女性だった。

遺体のそばでは、47歳になるその女性の三女が座り込んでいた。三女は低体温症の状態にあったが、病院に運ばれ、命には別状がなかった。

そして、女性の夫の遺体も、そこから300メートル上流で発見された。夫のほうは74歳だった。

これを受けて埼玉県警は、三女を母親に対する殺人、父親に対する自殺幇助(ほうじょ)の疑いで逮捕した。三女は、その日の未明、両親を乗せた軽自動車を運転し、車ごと利根川に突っ込み、心中をはかったのだった。

三女は容疑を認め、「認知症の母の介護で疲れた。貯金も年金もなくなった。病気になり、働けなくなった父から『一緒に死のう』と言われ、一家心中しようとした」と供述した。

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