ゲームストップ騒動に重なるバブル崩壊の記憶 ブラックスワンか、それとも市場のカナリアか?

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ゲームストップ株の急騰は金融市場のカジノ化による「大暴落」の可能性を示唆しているかもしれない(写真:Tiffany Hagler-Geard/Bloomberg)

アメリカのゲーム小売りチェーン「ゲームストップ」の株価が、SNSを通して集まった個人投資家の「買い」によって急騰したニュースが話題になっている。ショート(カラ売り)を仕掛けていたヘッジファンドが、莫大な損切りを余儀なくされ、個人投資家がプロの投資家に勝ったと言われているからだ。

「素人がプロに勝った」は本当か?

日本にはない特異な取引形態が使われたために、あまりピンとこない個人投資家が多いかもしれないが、当初報道された「素人がプロに勝った」「まったく新しい投資革命」といった論調は残念ながら当てはまらない。

カラ売りを大量に仕掛ける投資戦略は、現在の金融市場には山のようにある。アメリカの株式市場のカラ売りランキングでは第1位が「テスラ」、第2位は「アップル」だが、テスラをカラ売りしていた投資家は、年初からの株高で350億ドル(3兆6500億円)を失ったという調査報告もある。カラ売りの世界でも桁違いのマネーが行き交っているわけだ。

カラ売り戦略では、株価が適正な価格よりも高く評価されている銘柄に大量の売りを仕掛けて、株価を下落させて利益を稼ぐ。ところが、目論見が外れて株価が上がると、カラ売り戦略をとる投資家は、追加の証拠金を要求されるため、カラ売り解消のために「買う」ことになる。株価はさらに上昇することになり、安い株価で買った投資家には大きな利益が転がり込む。

こうしたカラ売りされている銘柄に大量の買いを入れて株価を上昇させる投資戦略を「ショートスクイーズ」と呼ぶ。日本語では「踏み上げ」とか「カラ売り解消による買い上げ」ともいわれるが、莫大な資金を必要とするために、個人投資家にはできない投資戦略と思われてきた。

問題は、現在がコロナによるパンデミックによって、各国政府や中央銀行が大量のマネーを放出。そのマネーが金融マーケットに集まり、巨大なバブルを形成しつつあることだ。このタイミングで「ゲームストップ・ショック」とも言われる「ブラックスワン的現象」(ブラックスワンとは、マーケットにおいて事前にほとんど予想できず、起きたときの衝撃が大きい事象)が起きたということは、バブル崩壊の可能性が高まってきたことを意味する。

2008年に起きたリーマンショックも、その前兆は前年の大手投資銀行「ベアー・スターンズ」系列のヘッジファンドが破綻したところから始まっている。カラ売りの巻き返しから恐慌に発展した「1901年恐慌」という先例もある。ゲームストップ・ショックの背景には何があるのか……。

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