固定資産税を払う人がたまげる鑑定の仰天裏側 業界団体に「丸投げ」の「経過措置」が20年超続く

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毎年やってくるこの税金の知られざる裏側とは?(東洋経済オンライン編集部撮影)
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家を買って家賃負担がなくなったと思ったら、もれなくかかる固定資産税。意外に高くてマイホームの幻想に気づかされる。3年に1度評価替えがあり、今年はその年にあたる。税を集める市町村の税務課が、全国約40万地点の評価を不動産鑑定士に発注する。その発注状況を調べると、業界団体と随意契約する馴れ合いのような実態がわかってきた。

自らも市町村の鑑定評価の仕事をして、「でたらめな契約に愛想が尽きた」という茨城県の不動産鑑定士、永井義久さんの協力で調べた。

茨城県の44市町村のうち、31市町村は随意契約で発注先を決めている。言うまでもなく、随意契約とは、複数の参加者が価格を競う競争入札によらず、適当と思われる相手を選んで結ぶ契約方式。反対が競争入札だ。そして、30市町村は業界団体である茨城県不動産鑑定士協会に「丸投げ」をして、傘下の鑑定士間の調整だけでなく、報酬の支払いまで任せている。

不動産鑑定士に3年に1度の「1000万円ボーナス」

その契約額は、随意契約をしている31市町村の平均で1地点当たりについて5万4686円(消費税込み、以下同)。競争入札をしている13市町村の平均は3万6594円と、3分の2で済んでいる。競争入札での契約にも幅があり、最も高い神栖市は6万1457円。最も低いかすみがうら市は1万6774円と、随意契約で最も高い鹿嶋市の6万7740円の4分の1以下だ。

茨城県内だけでも1万3000地点以上の鑑定評価をして、約6億4000万円を使った。同県鑑定士協会の会員は約60人なので、単純計算で1人1000万円。「3年に1度のボーナス」と言われるゆえんだ。

一方、例えば随意契約の約9000地点を競争入札の平均額で契約したとしたら、約1億6000万円が節約できる計算となる。

茨城県不動産鑑定士協会が水戸市に出した見積書。この金額で随意契約が結ばれた(筆者撮影)

随意契約の場合でも、市町村は契約の前に見積書を取る。永井さんが、この見積書についても情報公開請求したところ、11市町が1地点当たりの鑑定報酬について、不動産鑑定業者の見積書を公開した。これを見ると、複数の鑑定業者が作った見積書が市町村ごとに同額か近い金額でそろっている。

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