「アップルカー」の成功が難しいと言える理由 i Phoneのような世界標準になるための課題

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アップルは「アップルカー」の製造を担うサプライヤーを求め交渉を続けている(写真:prachanart/istockphoto)

「アップルカー(通称)」が迷走している。

まず、2021年1月にアメリカや韓国の一部メディアが、韓国のヒュンダイグループがアップルカーの生産でアップルと合意すると伝えるも、その話が報道されてすぐ、ヒュンダイは一転して合意を否定した。

2月に入り、真偽のほどは定かではないが、ヒュンダイグループ傘下のキアのアメリカ・ジョージア州内工場で2024年から生産、という基本合意の内容だとされる情報も報道された。

また、アップルはヒュンダイグループのみならず、複数の自動車メーカーにアップルカー生産を打診しており、その1社がEVの「リーフ」やシリーズハイブリッドシステムの「e-POWER」を開発・製造する日産だとの報道もあった。

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この点については、2021年2月9日にオンライン開催された今期第3四半期の決算報告の質疑応答で、ドイツ人記者の問いかけに対して内田誠CEOがアップルとの交渉を否定しなかったことも、大きなニュースとなった。

筆者は、アップルカーを開発するアップル社内プロジェクト「タイタン」について、アップルのティム・クックCEOがその存在を認める前から、シリコンバレー周辺のIT業界関係者やアップルと関係が深い自動車業界関係者らを通じて、その存在を認識していた。

また、これまで世界各地でEVなどの電動化車両や自動運転技術に関して、民間企業や各種行政機関に対して取材や意見交換を定常的に行ってきた。

そうした経験を踏まえて、アップルカーのこれからについて考察してみたい。

なぜ、このタイミングでの量産なのか?

最も大きな理由は、アップルという企業の本質である、自社で主要な生産設備を持たないファブレス化のお膳立てが整ったからだと考えられる。つまり、EVの大量生産に対応できる企業がおむね出そろい、EV生産が安定的に行えるようになったということだ。

時代を振り返ると、最初にEV普及が進んだ自動車創世記の1900年代前半や、オイルショックやマスキー法の影響で低燃費の小型車普及が進んだ1970年代、そして1990年のアメリカ・カリフォルニア州環境局によるZEV法(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法)施行など、いわゆるEVブームが何度か起こったが、EVは利活用の条件が限定された特殊車両の範疇を超えることはなかった。

それが2000年代末から2010年代頭にかけて、やっとEVが“普通のクルマ”として扱われるようになる。

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