アメリカを悩ませる日本が抱える2つの大問題 アジアで起こっている事態にアメリカやきもき

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新しく発足したバイデン政権の対中戦略は、価値観の線引きに重きを置き、「戦略的競争」を民主主義と権威主義の戦いとしている。「ミャンマーはバイデン大統領が掲げる民主主義と同盟国へのコミットメントの最初の試練だ」と、政権と密接な関係を持つアメリカの元高官は話す。

今回は特に、「日本側との見解が衝突する懸案事項の第一はこのミャンマーをめぐる問題」であり、これにどのように折り合いをつけるかが問われている。

天安門事件のときと同じパターン

日本側の当局者が、アメリカ側の当局者に非公式に、「アジア人の受け取り方の違い」について説明に励んでいると前出の元高官は話す。同氏は現在の状況を、日本がアメリカの対中制裁圧力に抵抗した1980年代の天安門事件への対応が最高潮に達したときと比較する。

「ミャンマーに対する日本側の態度は、同じパターンのようだ」と、日本のベテラン外交ジャーナリストも指摘する。「日本側は過度の圧力は、かえって民主化のプロセスの妨げになると主張している」。

日米の当局者は、この違いを埋めるために最善を尽くしている。アントニー・ブリンケン国務長官は先週、茂木敏充外務相と電話会談し、協力への合意を取り付けようとし、茂木外相は公式声明に参加する用意があることを示唆した。しかし、日本の外相は中国公安辺防海警部隊について話すことにより関心を示していた。

もっとも、日米関係に深刻な影響を与えているのはミャンマーをめぐる問題ではない。ほかでもない日韓関係である。

バイデン政権は発足後数日の内に、日韓の両同盟国に、こじれた関係を修復するために迅速に動くよう、穏やかではあるが明確なメッセージを送っている。バイデン大統領とブリンケン国務長官は、日韓両国との電話会談で、アメリカにとって「日米韓の3国間協力関係」を維持することの重要性を指摘した。

アメリカ側はあらゆる機会をとらえて同じメッセージを送っている。先ごろの茂木外相との電話会談では、ブリンケン国務長官は「日米韓3国間の調整や、日米豪印戦略対話(Quad)を通じた更なる地域協力を歓迎する」と述べた。

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