「成田発成田着」遊覧チャーター飛行が人気の訳 1時間で完売、3時間の遊覧飛行に新たな価値

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JALの抱える事情も同様だ。同社路線事業戦略部企画グループの丹羽由紀子氏は「機材がいっぱい止まっている光景を目の前で見ている空港スタッフらから、(余った)機材で何かできないかとアイデアが出た」と語る。

気になるのは、出発地に戻る遊覧飛行にニーズがはたしてあるのかだ。成田空港を飛び立ち、そのまま引き返すのは、航空サービスが提供する「移動」という最大の価値を提供できない。

遊覧飛行の料金もけっして安いとは言えない。例えば、2020年12月にJALが実施した遊覧飛行の料金は、最も安くて1人当たり1万9000円。これは、LCC(低コスト航空会社)であれば、成田ー那覇間などを往復できる金額だ。

ANAの遊覧飛行に至っては、最も安くて1人当たり3万3000円。ファーストクラスだと10万円になり、約2~3時間にわたって空の遊覧を楽しめるとはいえ、LCCを利用すればアジアの都市を往復できる料金だ。

遊覧飛行ならではの体験価値

それでも発売即完売の人気を集める理由が、海外旅行でしか味わえない体験の提供だ。例えばANAのA380はハワイ線のみに投入されており、こうした機会でないと同機に搭乗するチャンスはない。ウミガメの装飾も、ファミリー層を中心に支持されている。

JALのシンガポール旅行風チャーターで提供された機内食(写真:日本航空)

JALの場合、A380のような特殊な機材ではないが、2020年11月には「シンガポール旅行気分」をテーマにした遊覧飛行を開催。搭乗ゲートの前に同国の観光名物「マーライオン」のモニュメントが設置され、機内食も同国で親しまれる「ハイナンチキンライス」を提供し、海外旅行気分を味わうことができた。

2020年12月にJALのシンガポール旅行風チャーターに参加した茨城県の20代女性は、「大学の卒業旅行シーズンだったので、国内旅行ではなく、海外気分が味わいたかった。搭乗前のイベントも充実していて、1万9000円のプランなら今後も参加したい」と語る。神奈川県の20代女性も「固まった休みをとれない仕事で、海外旅行に行けなかった。こういう企画を待っていた」と話すなど、評判は上々だ。

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