韓国の子どもの成長をむしばみ始めたコロナ禍 親の収入減で子どもの世話に手が回らず健康に影響

✎ 1〜 ✎ 49 ✎ 50 ✎ 51 ✎ 最新
拡大
縮小
生活保護を受けているキム・ジュヨンさんが、小1のトンウ君とハングルを覚えようとしている。零下18度の気温でも十分な暖房機器がない(写真・ソウル新聞)

「記者のおじさん、ご飯をおごってくれませんか。お腹がとても空いているんです」

受話器から聞こえる懐かしい声には、いきなり電話を掛けてきた気恥ずかしさも伝わってきた。「ぼくです、ヒョンビン(11、仮名)です。以前、コンビニで会った……」。ひとまず弁当を購入できる電子ギフトクーポンを携帯電話から送った。彼がご飯を食べたころを見計らって連絡し、ヒョンビン君に事情を聞くと「給食カードの限度額を使い切ってしまったのに、家に食べ物がなくて……」と返ってきた。

食事支援金を使い切る子どもたち

ヒョンビン君と会ったのは2021年1月27日午後5時40分。ソウル市内北東部・蘆原(ノウォン)区のあるコンビニでだった。小学校5年生の彼は、自分の手にあるハンバーガーが夕食だと言った。夕食をコンビニで解決するようになって1年経つという。

父親は働き口を求めて地方におり、身体の具合が悪い母親はそれでも働いて家にいない。子ども自ら、食事を解決する理由だ。彼は「お父さんは家に時々帰ってくる。具合が悪くて家にいたお母さんも、昨年(2020年)2月から働いて、帰ってくるのは夜遅い」と話す。

ヒョンビン君はソウル市が提供する児童向け給食カードを使っている。支援金額は1日1食当たり6000ウォン(約573円)。1日で最高1万2000ウォン(約1147円)まで使える。支援対象となる児童の状況で違ってくるが、彼の場合は週末には支援されず、ひと月当たり13万2000ウォン(約1万2622円)が限度だ。給食カードで昼食・夕食をまかなうヒョンビン君のような子どもたちは、すぐに限度額をオーバーしてしまう。

コロナ禍で通学ができず、ヒョンビン君は深夜までYouTubeを見たりスマートフォンでゲームをし、起きるのはお昼前。同級生と比べて小さな体格だった彼は、コンビニで買うインスタント食品中心の食事で、この1年間で体重が24キログラムから34キログラムに太った。

次ページ間食が主食となった子どもたち
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT