不正会計の中国・新興カフェ、米国で破産申請 倒産手続き一本化へ、集団訴訟の中断もくろむ

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ラッキン・コーヒーは不正会計の露呈でナスダックを上場廃止になり、アメリカの株主から集団訴訟を起こされている(写真は同社ウェブサイトより)

中国の新興カフェチェーン、瑞幸咖啡(ラッキン・コーヒー)は2月5日、アメリカの連邦破産法15条の適用をニューヨーク州南部地区連邦破産裁判所に申請したと発表した(訳注:同社によれば破産申請は経営再建プロセスの一環であり、中国で営業中の店舗に影響はないとしている)。

ラッキンは2019年5月にアメリカのナスダックに上場した後、1年も経たないうちに売上高の大幅な水増しなどの不正会計が露呈。2020年6月末に上場廃止となった。その後、株主や転換社債の投資家が損害賠償を求めて複数の訴訟を起こしている。

連邦破産法15条は国境を越える破産案件を対象に、債権者の利益の保護や債務者の資産価値の最大化を目的にしている。裁判所は申請の受け付けからその可否を決定するまでの期間、債権者による資産差し押さえの停止など、債務者に一時的な猶予を与えることができる。

今回、ラッキンが連邦破産法15条の適用を申請した狙いは、アメリカの株主が提起した集団訴訟の一時中断を請願し、倒産手続きを会社の登記地である英領ケイマン諸島の法律に基づく処理に一本化することにある。

実体は中国、登記はケイマン、上場はアメリカ

背景には事業実体は中国、登記地はケイマン、上場先はアメリカという、ラッキンの複雑な経営構造がある。

同社の倒産手続きをめぐっては、一部の債権者がケイマンの裁判所に破産を申し立て、2020年7月に仮清算人が指名されている。また、ラッキンは2020年12月、不正会計を調査したアメリカ証券取引委員会(SEC)との和解に応じ、1億8000万ドル(約190億円)の罰金支払いに同意した。

本記事は「財新」の提供記事です

「ケイマン法に基づく倒産手続きとアメリカ法に基づく集団訴訟に同時に対処することはできない。例えばSECに支払った罰金を、誰に対する賠償に優先して使い、配分の比率をどうすべきなのか(一本化しなければ)決められない」

財新記者の取材に応じたラッキンの関係者は、今回の破産申請の必要性についてそう説明した。ただしこの関係者によれば、アメリカの裁判所が集団訴訟の一時中断を認めるかどうかは未知数だという。

(財新記者:沈欣悦)
※原文の配信は2月5日

財新 Biz&Tech

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