中国EC大手アリババ、主力事業の稼ぐ力に陰り 2020年10~12月期、臨時損益除く純利益27%増

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アリババの成長率は依然高い水準にあるものの、市場の期待値には届かず株価の下落を招いた。写真はイメージ(編集部撮影)

中国の電子商取引(EC)最大手の阿里巴巴集団(アリババ)は2月2日、2020年10~12月期の決算報告を発表した。それによれば、同四半期の売上高は2210億8400万元(約3兆5926億円)と前年同期比37%増加。純利益は779億7700万元(約1兆2671億円)と同56%増加した。

今回の四半期決算の見どころは、スーパーマーケット大手の「高鑫零售(サン・アート・リテール)」を初めて連結決算に組み入れたことだ。アリババは2020年10月、36億ドル(約3780億円)を投じて高鑫零售への出資比率を77%に引き上げた。

実は高鑫零售の組み入れ前の数字で見ると、アリババの2020年10~12月期の売上高は前年同期比27%の増加にとどまる。これは、直前の2020年7~9月期の前年同期比成長率を3ポイント下回っている。

それだけではない。2020年10~12月期の純利益を大幅に押し上げた主因は、アリババが保有する株式の評価額の上昇だ。投資損益やストックオプションを除いた非国際会計基準ベースの純利益では、前年同期比の増加率は27%に縮小する。

2つの新規事業が利益生むステージに

つまり、特殊要因を除くと主力事業の稼ぐ力は落ちているのだ。今回の四半期決算が開示されるや、ニューヨーク証券取引所に上場するADS(米国預託株式)の価格はずるずると下がり、2月2日の終値は前日比3.81%安の254.61ドル(約2万6732円)に沈んだ。

とはいえアリババ級の巨大企業としては、売上高と利益の成長率は依然として高い。また、今回の決算で2つの新規事業が利益を生むステージに入ったことは明るい材料だ。1つ目はクラウド事業の「阿里雲(アリババ・クラウド)」で、四半期ベースで初の黒字化を達成。2つ目は物流事業の「菜鳥網絡(ツァイニャオ)」で、同じく四半期の営業キャッシュフローが初めてプラスに転じた。

その他の新規事業のなかでは、低価格商品を主力とするEC大手の拼多多(ピンドゥオドゥオ)の対抗馬として投入したECアプリ「淘宝(タオバオ)特価版」の月間アクティブユーザー数が、2020年12月末時点で1億人を超えたのは注目に値する。

本記事は「財新」の提供記事です

また、ライブコマース(生中継のネット動画による実演販売)のプラットフォームである「淘宝直播(タオバオ・ライブ)」を通じた商品販売の総額(流通総額)は、2020年の通年で4000億元(約6兆5000億円)を突破。ネットとリアル店舗を融合した食品スーパー「盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)」の店舗数は、2020年12月末までに246店に増加した。

(財新記者:原瑞陽)
※原文の配信は2月3日

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