コロナワクチン「極めて有望」も見逃せない事実 接種に副反応リスクがあるのはどんな人たちか

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海外では先行してコロナワクチンの接種が始まっている(写真はアメリカ・カリフォルニア州 、David Paul Morris/Bloomberg)

コロナワクチンが世間の関心を集めている。外来診療をしていると、「私はワクチンを打つべきでしょうか」と聞かれることが増えてきた。

政府はワクチン接種を推奨している。ところが、多くの国民が安全性について不安を抱いている。私は「若年者なら問題ありませんが、高齢者には一律に推奨しません。ケースバイケースです」と説明することにしている。本稿では、高齢者におけるコロナワクチン接種の安全性について解説したい。

ノルウェーのワクチン接種をめぐって何が起きた?

1月15日、衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。ノルウェーでワクチンを接種した高齢者23人が死亡したというのだ。接種したのはアメリカ・ファイザー、ドイツ・ビオンテックのワクチンで、ノルウェー医学庁によると、死者13人は剖検されており、ワクチン接種との関連が示唆されるという。

ただ、同19日にはノルウェーの保健当局が「これまでのところ、ワクチン接種が死亡リスクを高めたという分析結果は出ていない」と発表し、ノルウェー医学庁の発表の火消しをはかった。保健当局は、「死亡者の多くが施設入居の高齢者で、その平均余命は短く、毎週300人以上が亡くなっており、ワクチン接種によって死亡リスクが高まったとは言えない」と述べている。その後、ノルウェー政府は、高齢者へのワクチン接種の方針を変えないことを表明した。

ノルウェー政府が置かれた苦しい立場は筆者にも十分に理解できる。コロナ克服のために、世界各国はワクチン接種による集団免疫の獲得に期待している。明確な医学的エビデンスがない状態で、ワクチンの安全性について軽率にコメントをするわけにはいかない。そんなことをすれば、世界中が大騒ぎになる。ノルウェー政府が慎重になるのも無理はない。

ただ、われわれのような臨床医はそうは言っていられない。大勢の「犠牲者」が出て、医学的エビデンスが確立するのを待っていられないのだ。私はノルウェーの報告はもっと重視しなければならないと考えている。

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