ソフトバンクGが反発する「勝手格付け」の是非 ムーディーズの情報発信に対し繰り返し批判

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孫社長は最も重視するのは保有株式の価値だと強調してきた。ムーディーズの格付けについてどれだけ気にしているのだろうか(撮影:尾形文繁)

孫正義社長率いるソフトバンクグループ(SBG)の怒りが収まらない。その矛先は、大手格付け会社のムーディーズ・ジャパンだ。

1月7日にムーディーズがSBGの格付けに関するレポートを公表。SBGは翌8日にリリースを出し、「(2020年3月に)格付け依頼を取り下げて以降、一切の情報提供を行っておらず、同社の見解は合理的な根拠のない主観的な想定および仮定に基づくもの」「同社に対し、勝手格付けの取り下げを繰り返し求めている」といった旨の意見を表明した。

SBGが問題視するのは「勝手格付け」にある。格付けは依頼型と非依頼型に分かれる。前者は発行体(企業)が格付け会社に依頼して有料で格付けを取得する。SBG広報は依頼型の場合、「当社経営陣との定期的なインタビューを通じて戦略の方向性を共有するとともに、開示情報の詳細補足説明や、見通しなど格付け分析に必要な情報を個別に提供している」と説明する。現在、SBGはS&Pグローバル・レーティング・ジャパンと日本格付研究所から依頼格付けを取得している。

断絶を生んだ2020年3月の格下げ

一方、非依頼型のいわゆる「勝手格付け」では、格付け会社に対してこうした情報提供を行っていない。そのため、SBGがムーディーズの格付けを「根拠のない主観的な想定」と厳しく批判するわけだ。

もともとムーディーズもSBGの依頼格付けを行っていたが、2020年3月に格付けを「Ba1」から「Ba3」へ一気に2段階引き下げたことでSBGとの“断絶”が起きた。「Ba」は「投機的と判断され、相当の信用リスクがある債務」への格付けだ。大幅な格下げは社債発行時の利率が上がって調達コストがかさんだり、投資家によっては社債購入を敬遠したりするなど、発行体にとっては資金調達に悪影響を及ぼす。

きっかけは、格下げの2日前(3月23日)にSBGが最大4.5兆円とする保有資産の売却・資金化(資産売却プログラム)を発表したことだった。ムーディーズはこれについて、「評価の高い上場株式の一部を売却していった場合、同社のポートフォリオの資産価値と信用力は悪化する可能性がある」などと述べていた。

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