第一生命「巨額詐取事件」、調停で解決のゆくえ 解明には時間、被害者は「即時全額一括賠償を」

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第一生命を舞台にした巨額詐欺事件。全容解明には時間がかかりそうだ(撮影:梅谷秀司)

2020年秋に第一生命西日本マーケット統括部の元営業職員による巨額詐欺事件が判明してから約4カ月。被害者3人と第一生命による1回目の調停が2月4日、東京地方裁判所で行われた。

この日、総額で19億5000万円がだまし取られた複数の被害者のうち、1人の被害者が陳述した。

被害者は「元営業職員に詐取された生命保険金は、被害者の母が娘を想う親心から、人生をかけて必死に残してくれたものだ」「第一生命が恒常的に元営業職員を特別扱いし、しかるべき監督を怠り続けたことで事件が起きた」と述べたうえで、「この疲弊し、悲しみや憤りを抱えたままの状態から、一日も早く解放していただきたく、第一生命に対して即時全額一括賠償の調停案を示してほしい」と調停委員会で訴えた。

全容解明には時間がかかる

被害者らを支援する目的で結成された第一生命被害者弁護団も、「第一生命の重大な注意義務懈怠(けたい)が被害を生んだものであり、ただちに全額補填すべきである」などと強く主張した。

第2回の調停期日は4月8日に予定されており、調停委員会の解決案が提示される見込みだ。被害者弁護団は「本件はそれぞれの事実関係については争いのない事案だ。遅くとも次回期日において、第一生命が全額一括の返済をなすとの調停勧告を出していただきたい」(東京共同法律事務所の猿田佐世弁護士)と訴えている。

今回の巨額詐欺事件をめぐって第一生命は、被害者に対して返済されていない金額の3割を先行弁済(補償)するとしている。3割を超える部分の弁済については、被害者が利息を受け取っているケースもあり、実際の被害額の算出が難しいことから、裁判所の調停制度を利用して第三者による判断を求めていた。

第一生命は被害者への弁済について、「今後も調停の場で真摯に話し合いに応じていきたい。調停委員会の意見は最大限尊重したい」(広報部)と述べている。

同社では西日本マーケット統括部の元営業職員以外に、複数の元社員らによる詐欺事件が判明しており、今回調停で審議されている事案を含めて被害総額は約20億7000万円、被害者は59人にのぼる。

【2021年2月7日13時3分追記】元営業職員の所属部署について、表記のように修正いたします。

第一生命は現在、保険の加入者が利用できる契約者貸し付けの利用者などを中心に、詐取の類似事例がないかどうか、確認作業に着手している。この調査は2021年3月末には終える見込み。さらに、個人保険・個人年金保険の全契約者約800万人を対象にした調査を早期に開始し、「2022年3月までには全契約者の確認を終わらせたい」(同社広報)としている。

いずれにしても、巨額詐取事件の全貌解明には時間がかかりそうだ。

東洋経済プラスの連載「問われる保険営業」では保険営業にまつわる課題を取り上げています。
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高見 和也 東洋経済 記者

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たかみ かずや / Kazuya Takami

大阪府出身。週刊東洋経済編集部を経て現職。2019~20年「週刊東洋経済別冊 生保・損保特集号」編集長。

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