資生堂、「魚谷社長」就任7年目で見えた光と影

値引き販売の謝罪にみる「ガバナンス不安」

2014年4月から資生堂の社長を務める魚谷雅彦氏はこの難局をどう乗り切るのか(撮影:尾形文繁)

「煙たい存在だと思うかもしれないが、強力なガバナンス(企業統治)体制は経営者を守ってくれる。ガバナンスに対する信認があればこそ、リスクを伴った経営判断をしてもステークホルダーは信頼し支持してくれる」

「資生堂の魚谷雅彦社長に今何を伝えたいか」との記者の問いに、早稲田大学名誉教授の上村達男氏はそう述べた。

上村氏は、会社法の専門家で2006~2018年の12年間、資生堂の社外取締役を務めた。元日本コカ・コーラ社長で2014年当時は資生堂のマーケティング統括顧問だった魚谷氏を、社長に推薦した1人でもある。

魚谷社長を推した元社外取締役の憂い

上村氏は何を憂えているのか。魚谷氏に対しては経営者としていいイメージを持ったまま、資生堂の社外取締役を退任した。その後、直接の接点は持っていないが、関係者から伝えられる情報や公表情報から資生堂の動きを見ていると、「最近漏れ聞く魚谷さんはかつてのイメージと違う人のように感じる」という。

上村氏が「問題は少し根深い」と思う出来事がある。それは自社EC(ネット通販)サイト「ワタシプラス」で起きた騒動だ。

資生堂は2020年11月11日から、主力ブランド「SHISEIDO」の化粧水などを値引きセットにして販売した。これに反発したのが化粧品専門店だった。

専門店の多くは中小零細の個人事業主。GMS(総合スーパー)やドラッグストアだけでなく、メーカーまでもが加わって値引き競争を加速するのであれば死活問題だ。専門店では複数の化粧品メーカーのブランドを販売しているが、古参であるほど資生堂ブランドを一緒になって作り上げてきたという自負も強い。

メーカー自らが値引き競争を誘引するような施策への批判は強く、11月30日には値引きセットの提供を終了。資生堂社長兼資生堂ジャパン会長として魚谷氏が専門店に向けて「お詫び文」を出すに至った。

その中では、「今般の弊社ワタシプラス施策に関し、専門店お得意先さま各位には、多大なご心配をおかけしたことに対し深くお詫びを申し上げる次第です。

本件に関しての弊社資生堂ジャパン内における当施策に関する協議の不足、もたらす影響への配慮の不足、さらに前後におけるコミュニケーションの不備、事後の対応の遅れ、などにより皆さまから弊社に対する信頼を損ねることとなったことは誠に遺憾であり、資生堂グループの責任者として陳謝いたします」などと記されている。

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