経営統合のPSAとFCA「中国事業」の立て直し急務 2020年の中国販売台数は両社とも大幅に減少

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PSAとFCAの中国事業は凋落に歯止めがかからない厳しい状況に陥っている(写真はPSAと東風汽車集団の合弁会社である神龍汽車のウェブサイトより)

欧米の自動車大手のグループPSAとフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は1月5日、前日に開催された双方の臨時株主総会で両社の経営統合が正式に承認されたと発表した。

PSAとFCAは2019年10月に経営統合計画を打ち出し、準備を進めてきた。双方の対等出資で設立される新会社の名称は「ステランティス」。経営トップは会長職にFCAの現会長のジョン・エルカン氏が、CEO(最高経営責任者)職にPSAの現CEOのカルロス・タバレス氏が就任する。

経営統合後のステランティスは、傘下にプジョー、シトロエン、オペル、クライスラー、ジープ、フィアット、アルファロメオ、マセラティなど14ブランドを擁する多国籍自動車メーカーとなる。統合による規模拡大をテコに経営効率を高めるとともに、自動車の電動化や自動運転技術の開発を加速する計画だ。

だが新型コロナウイルスの世界的大流行により、ステランティスは多難な船出を迫られている。PSAとFCAはどちらも欧州市場への依存度が高く、防疫対策のロックダウン(都市封鎖)の影響などで販売が大きな打撃を受けているためだ。PSAの2020年1~9月のグローバル販売台数は前年同期比37%減少。FCAの販売台数も前年比3割落ち込んでいる。

新会社の規模は世界第6位に後退も

2019年に経営統合計画を発表した時点では、PSAとFCAはフォルクスワーゲン(VW)、トヨタ自動車、ルノー・日産自動車・三菱自動車の連合に続く世界第4位の多国籍自動車グループの形成を目指していた。だが2020年1~9月の販売実績で比較すると、統合完了後のステランティスの規模は世界第6位に後退する可能性がある。

そんなステランティスにとって急務といえるのが、世界最大の自動車市場である中国での事業立て直しだ。FCAと広州汽車集団の合弁会社である広汽フィアット・クライスラーの2020年1~11月の販売台数はわずか3万5300台で、前年同期比44.65%も減少した。

本記事は「財新」の提供記事です

PSAと東風汽車集団の合弁会社である神龍汽車の状況はさらに悲惨だ。同社はピークの2015年には70万台余りを販売したが、その後は凋落に歯止めがかからなくなっている。東風汽車集団が2021年1月5日に公表した速報値によれば、神龍汽車の2020年の販売台数は前年比55.7%減の5万台にとどまった。

(財新記者:劉雨錕)
※原文の配信は1月6日

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