SHOWROOM前田社長が放つ、「プロ」の短尺動画 視聴者はみな心の空洞を埋めようとしている

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前田裕二社長がライバー(配信者)を評価する軸は、シンプルに「がんばっているか(やるべきことを見極めて、そしてそれをやりきっているか)」だという(撮影:今井康一)
外出自粛期間が長引き、個人の生活が様変わりしている。移動が制限され、観光業や飲食店が打撃を受ける一方、ゲームや動画の配信、ネット通販(EC)などは伸びており、その動きは対照的だ。
2015年に設立されたSHOWROOMは、無料で誰でもライブ配信や視聴ができる仮想ライブ空間「SHOWROOM」を運営。今やアプリは570万ダウンロード、会員登録者数は460万人、配信者数は33万ルームを誇る(2020年10月末)。
2020年10月には、縦型のスマホに特化した短尺(5~10分以内)でプロクオリティの動画を配信する、バーティカルシアターアプリ「smash.」を始動した(月額550円)。smash.のCMにはHey! Say! JUMPを起用し、今年3月末までには2600本のコンテンツを品ぞろえする力の入れようだ。
このコロナ禍でエンタメやメディアのあり方はどう変わるのか。1月25日(月)発売の週刊東洋経済1月30日号「1億人の職業地図」特集では、『メモの魔力』(幻冬舎)等を執筆、TVやラジオでマルチな活躍をする前田裕二社長を直撃した。

自分のギフトが配信者の夢につながる

━━2020年は長引く自粛で、ゲームの「あつまれ動物の森」や動画配信のネットフリックスなど、巣ごもり需要は好調でした。本業のSHOWROOM事業の手ごたえはいかがでしたか。

コロナ禍において、「夢を実現したい」配信者と「夢を応援したい」視聴者のつながりが深まり、SHOWROOM事業は顕著な成長を見せた。配信者や視聴者の増加にあわせ、ギフティング課金者数も増えた。ライブ配信市場全体が伸びているが、その中でも私たちはエンタメを主な領域にしており、リアルでイベントに行けない方々の可処分時間が一気にオンラインに向かった事がシンプルにドライブした現象と見る。

『週刊東洋経済』1月30日号(1月25日月曜発売)の特集は「1億人の職業地図」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。

指標の中でも特にギフティング課金者数が伸びた理由は3つあると考える。1つは「インタラクション(相互作用)課金」によるもの。視聴者はギフティングを通じて、配信者と「見に来てくれて嬉しい」といったような心の通ったコミュニケーションをとることができる。コロナが空けた心の空洞を満たしてくれる。2つ目は「パフォーマンス課金」。心揺さぶられるほど感動する歌を配信者が歌い、視聴者が純粋に「素晴らしい」と感じる。そこで発生するギフティングを指す。これが最も一般的なギフティングのイメージなのであろうと思う。そして3つ目が「応援課金」。自分のギフト(有料アイテム)がそのアイドルの未来や夢につながるのを実感することができる。利他課金と呼んでもよいのかもしれない。

特に足元でギフティング市場が伸びているのは、インタラクションや応援が大きいと感じる。「誰かの役に立ちたい」などといった「人同士の心のつながり」に価値を感じる視聴者が増えていることを実感する。特に緊急事態宣言後の4~5月に、ネットサービスやメディアはどれも急激に伸びたと思うが、自社のKPIを見るにつけ、どんどん心が乾いていく(そしてどこかに潤いを求める)社会の断片を切り取っている気がしてならない。

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