一歩前進「富士登山鉄道」、今年は正夢になるか 既存の道路を活用してLRT敷設、ハードルは高い

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河口湖付近から見た冬の富士山。登山鉄道を敷く構想が進んでいる(撮影:尾形文繁)

言わずと知れた「日本一の山」富士山。その偉容は日本を代表する景観として多くの登山者や観光客をひきつけ、霊峰として古くから信仰の対象となってきた。

その富士山に、登山鉄道を敷こうという構想が進みつつある。

山梨県は2020年12月2日に開いた、有識者らによる「富士山登山鉄道構想検討会」の理事会(理事長・山東昭子参院議長)で、同県側の山麓と5合目を結ぶ有料道路「富士スバルライン」上にLRT(次世代型路面電車)を敷設し、総事業費を1200億~1400億円程度とする試算などを盛り込んだ素案を示した。

2013年に世界遺産に登録されたものの、来訪者の増加による環境への影響が懸念される富士山。登山鉄道構想は、現在の自動車による交通を鉄道に置き換えることで環境負荷を低減する狙いがある。日本一の山に鉄道を通すという壮大なプランは、どこまで具体化しているのだろうか。

「民間で黒字化可能」

素案は、山麓から5合目まで富士スバルライン上の約25~28kmの区間に軌道を整備し、10mの車体を3つつないだ全長30m、定員120人の車両を最大で2本連結して走らせると想定。概算事業費は、軌道を複線として中間に4つの駅を設置し、車両を24編成導入すると仮定して1200億~1400億円程度と試算した。

収支については、国内の有名山岳観光地である立山黒部アルペンルート(富山県・長野県)の交通費やアンケートなどに基づき、運賃や需要を設定して検証。往復運賃を1万円、年間利用者数を300万人とした場合、公的補助なしで民間事業者がすべての施設を保有し運行する「民設民営」であっても、開業初年度から単年度黒字が見込めるとしている。

理事からは「短時間にしっかりした形で構想ができた」などの評価がある一方、「収支予測が粗い」「事業採算性は不確定要素が多い印象」といった指摘も出た。県は意見を踏まえて素案を修正のうえ、今年2月に総会を開いて構想を取りまとめる考えだ。

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