日本の男は自分の履く「ゲタの高さ」を知らない 袋小路に入っている日本に突然変異は起こるか

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働き方についての取材や論考も多い出口治明さん(左)と、女性学、ジェンダーについて研究を続ける上野千鶴子さんが語り合います(撮影:梅谷 秀司、今井 康一)
日本人にとっての幸せになる働き方とは?
さまざまな課題がある中、これからどのように変化、対応していけばよいのか。「日本人は『移民は優秀な人』だとわかっていない」(2020年12月25日配信)に続いて、出口治明さんと上野千鶴子さんが語り合った新著『あなたの会社、その働き方は幸せですか? 』から一部を抜粋、再構成してお届けします。

仲間を増やして内部から改革する

出口 治明(以下、出口):ベンチャー企業が組織をゼロから作るのは簡単ですが、今ある組織を変えることは本当に難しいと思います。

上野 千鶴子(以下、上野):そうです。

出口:歴史を見ると、今の王朝が嫌だと思った人はどうしたかというと、大体3つくらいのパターンがあります。いちばん簡単なのは、実力者がクーデターを起こして今の王様をクビにする。中国でいえば武則天のケースです。

2つ目は仲間を連れて飛び出して、新しい国を作る。そして今の王朝を逆に征服する。隋と唐のケースです。3つ目は時間をかけて仲間を増やして多数派工作を行ない王位を簒奪する。中国の晋やフランク王国のカロリング家の例ですね。

王朝を会社と考えれば、1つ目はかつての関西電力や三越などに実例があります。新しい国を作るというのは、わかりやすくいえば、起業をするということ。多数派工作というのは、今の会社で仲間を作って会社の中から改革していくということです。

上野:社会変動を見てくると、かつての権力集団が内部改革をして変化したという例はほぼゼロに等しくて、外部にいた集団が異形細胞のごとく取りついて、宿主を凌駕したという社会変動がもっとも多いと思います。

出口:そうですね。権力集団の中で改革が起きたのはゴルバチョフのケース。外部集団の例は、モンゴル帝国(大元ウルス)。中国の南宋王朝を倒して中国を統一しました。大元ウルスがペストなどで倒れた後に、明を建国した朱元璋は、最下層からのし上がった人物です。

上野:既得権益層から出た人物ではありませんね。既得権益層が自己変革したケースはありますか?

出口:中国でいえば、隋から唐に変わる時がそうです。既得権益層の中の権力争いでした。隋の最後の皇帝、煬帝と唐の初代皇帝、李淵はいとこ同士です。いとこが反乱を起こして本家を潰しました。

上野:まさに権力闘争ですね。

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