イオンモール「テナント支援」に懸けた重い決断 コロナで賃料を減免、社長就任直後の危機感

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イオンモールの岩村康次社長は、賃料減免によるテナント支援について「重い決断だった」と話す(撮影:今井康一)
他の小売企業と同様、国内でショッピングモール143施設を運営するイオンモールも新型コロナウイルスの影響を大きく受けた。
2020年春の緊急事態宣言下では、全店で臨時休業に踏み切った。その影響で2021年2月期の連結最終損益は40億円の赤字を見込む。赤字転落は2002年の上場以来、初めてのことだ。
2020年3月に社長に就任した同社の岩村康次氏は、2021年も厳しい事業環境になると予測する。だが、モール施設の価値や魅力を改めて打ち出していけば、「(事業の先行きに対して)暗くなることはない」と前向きだ。

社運を懸けてテナントを支援

――岩村社長は2020年3月1日の社長就任までベトナム事業の責任者として海外に赴任していました。帰国後、まもなくコロナ第1波に見舞われたことになります。

2月27日までベトナムで仕事をして翌日に帰国した。現地での仕事納めはフック首相との面談。その後、みんなで打ち上げをして面白く終われたので、「ついているな」と思っていた。

ところが社長に就任すると、新型コロナの影響で挨拶にすら行けない。日本を4年間離れていたので各拠点を早く見に行きたかったが、国内外問わず、出張もダメ。その戸惑いは大きかった。前線を見ることができずにいろんなことを判断しなければならないというのがつらかった。

――4~5月に各地のモール施設を休業。それに伴い、賃料減免によるテナント支援に踏み切りました。

当時は先行きの見えない中で、テナント各社が一種のパニック状態にあった。そのため、「まずは落ち着いてください。そのうえで考えましょう」と、支援を通じて(メッセージを)発したかった。テナント各社には雇用も維持してほしかった。

当社はモール施設を所有する「大家」と受け取られがちだが、モール施設の多くを資産効率向上のために流動化して、バランスシートから落としている。平たくいうと、イオンモールも店子であり大家に家賃を支払っている。テナント各社の賃料を減免する反面、当社は大家に家賃を支払い続けている。1日の休業で失っていくキャッシュは億円単位となる。

それだけに重い決断だった。「何カ月閉店できるのだろうか」「これ以上休業となったら本当に会社は……」という危機感があった。だが、(テナントへの)支援はやらなければならないものだった。イオングループ内でも反対意見はなく、全員賛同してくれた。

この記事の続きは東洋経済プラスの短期連載「新社長12人 2021年の展望」で無料でお読みいただけます。連載では以下のトップインタビューも配信しています。

①インタビュー/日本ペイントホールディングス・田中正明社長
②インタビュー/クボタ・北尾裕一社長
③インタビュー/カゴメ・山口聡社長
④インタビュー/三井化学・橋本修社長
⑤インタビュー/岩谷産業・間島寛社長
⑥インタビュー/イオンモール・岩村康次社長
緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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