「まだ154キロ出る」26歳元広島投手、悲壮な挑戦 大谷・藤波世代の辻空が語る断固とした決意

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埼玉武蔵ヒートベアーズでプレーしながら、NPB復帰に挑戦している辻空(写真:TBSテレビ)
華やかなプロ野球の世界。活躍した選手には名誉と莫大な報酬がもたらされる一方で、競争に敗れ、表舞台から去りゆく選手がいる。そんな「戦力外通告」を受けた選手をドキュメンタリーで描いてきたのが、TBSテレビの『プロ野球戦力外通告』だ。
12月29日(火)夜11時10分からの放送回で通算17回目を迎えるこのシリーズ。プロ野球選手の姿は特別ではなく、誰の身にも起こりうる『究極のリアル』でもある。放送を控え、過去の番組に関わるサイドストーリーを取材班が5回にわたってリポートする。
第5回は辻空(つじ・そら)。2012年オフに広島東洋カープから育成ドラフト1位で指名され入団。2015年オフに支配下登録されたものの、2018年オフに戦力外通告を受けた。その後、独立リーグの埼玉武蔵ヒートベアーズへ入団し、NPB復帰への挑戦を続けている。
第4回:「社会人野球でも戦力外」元プロが挑む意外な道

ケガでアピールの機会を失った

「同じ右投手だったので、悔しかったです……」

そう振り返るリモート画面越しの辻空の目には力があった。辻は2018年、広島東洋カープから戦力外通告を受けた。独立リーグの埼玉武蔵ヒートベアーズに所属し、NPBへの復帰、さらには現役時代に立つことがかなわなかった1軍のマウンドを目指している。

辻が目指すルートの好例を一足先に示した選手が、「同じ右投手」の歳内宏明だ。昨年、阪神タイガースを戦力外になり、独立リーグの香川オリーブガイナーズに所属。そして今年、見事な復活劇を見せつけた。今シーズン途中の9月にヤクルトスワローズと契約を結ぶと、16日に1軍のマウンドへ返り咲いた。10月1日の試合では、実に1829日ぶり、先発登板としては自身初の勝ち星を挙げたのだ。

例年、NPBの支配下選手登録の締め切りは7月末。新型コロナウイルスの影響で開幕が3カ月遅れた今シーズンは、特例により登録期間が9月末まで延長されていた。しかし、歳内のNPB復帰が報道されたとき、辻自身は今シーズン中に復帰できる可能性は限りなくゼロに等しかった。

「完全にプロからの獲得はなくなった。野球をやめよう」

それは8月8日の神奈川フューチャードリームス戦のときだった。辻は1球目を投げた瞬間、右肩に違和感を覚えた。わずか22球での降板。不運にも、それは違和感では済まなかった。診断は大円筋断裂。全治2カ月を宣告された。2カ月後には独立リーグのシーズンは終了し、前述の支配下選手登録期間も過ぎてしまう。辻は、突如としてアピールの機会を失った。

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