コロナ禍の日本で無気力が蔓延したのはなぜか

忘れてしまった政府に「抵抗する」権利

パリで11月に発生したデモ。政府による治安関連法案に反対している(写真・Clement Mahoudeau/AFP/dpa)

2020年初頭まで誰も予想さえしなかった新型コロナウイルス感染症が、世界を覆い続けている。これまでも伝染病は何度も襲来していたのだが、それらは極地的で断続的なものであり、世界中を一度に覆うようなことは考えさえもしなかった。今は21世紀、科学の時代である。そんなことが起こるはずがない。誰もがそう思っていた。

これまでも気候変動による災害や天変地異といった、21世紀に入ってこれまで考えなかったリスクがあちこちで発生している。確かに、「これまでと同じままでいられる」とは誰も思っていない。しかし、ここまでコロナ禍が世界を覆うことになるとは、誰も予測できなかったはずだ。

科学が政府を乗っ取った

伝染病は人類の大敵のひとつだ。ただ、今回のような国家によるロックダウンなどという政策はありえなかった。検疫は昔からあったが、それは限定的な地域に当てはめられるにすぎなかった。国家全体、あるいは世界中に広まるロックダウンは考えることもなかったのだ。

逆にいえば今回の事態は、近代科学の発展によってもたらされたともいえる。今では科学が信頼されるがゆえに、科学者の言葉が重く受け取られ、それが国家の政治に反映したとさえいえるだろう。科学という領域が政治を乗っ取った。20世紀とは、科学が宗教に取って代わる普遍的地位に就き、何事も「科学的であることこそ真理」という一種の転倒が実現した時代だ。

科学主義は人類に幸福をもたらしていることも確かだ。しかし、他方では原子爆弾などの科学兵器を生み出し、人類に一触即発の危機をもたらしている。もちろん科学者は、あくまで最良の方法を提示しただけなので、具体的な政策決定に関与したわけではない。ただ、政治家がそれをあまりにも真面目に受け取ってしまうと、科学者が大きな影響を及ぼすことにもなるのだ。

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