「ミロ」だけじゃない、大人が飛びつく健康食品 「粉ミルク」を飲む大人が徐々に増えている

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大手フリマサイトのメルカリなどでは「ミロ」が大量に出品されている(メルカリのサイトから引用)

「なぜ今さら『ミロ』に注目するの?という感じだった」。ネスレ日本の関係者は、麦芽飲料「ミロ」の突然のブームに戸惑いを隠せない。

ココア味のミロは1973年に日本で発売されたロングセラー商品だ。カルシウムや鉄分、基礎ビタミンなどの補給が手軽にできる栄養機能食品として、主に成長期の子ども向けに販売されてきた。

ネスレ日本の広報担当者によると、需要が急増したのは2020年7月。ミロで手軽に鉄分補給できるといった、栄養機能に注目した発言がSNS上で広がったことがきっかけと見られる。

この結果、9月末には240グラム入り商品の生産を一時中止。供給体制を整え11月中旬に販売を再開したものの、販売中止の事実がさらに注目を集めたこともあり、前年比7倍という予想をはるかに上回る注文が殺到した。

現状の生産体制では求められている量を生産することができず、ネスレ日本は12月8日にミロの全商品の販売中止を発表した。販売再開は2021年3月以降としている。ミロの中身の粉末はシンガポールで製造して輸入している。現在はその調達を急ぎ、十分な供給量の確保に専念している状況だ。

親子飲用で復活の兆しがあった

「販売を再開したときにブームが過ぎ去っていないだろうか」。3カ月以上も販売を中止せざるをえない事態に、冒頭の社員からは心配の声が漏れる。広報担当者も結果として販売機会を失ってしまうことに「残念でならない」と述べる。

市場調査会社のインテージによると、「ミロ」を含む麦芽飲料市場の販売金額は減少が続いている。2009~2019年の10年間ではおよそ4割も減少した。少子化の影響やココアなどほかの競合品に消費者が流れたことが、販売金額減少の背景にあった。

品切れが続出した「ミロ」(写真:ネスレ日本)

今回のブームを牽引したのは大人の女性が中心だ。子どもの頃に飲んで馴染みがあったため、「再び飲んでみよう」という動機が生まれやすかったと思われる。

ネスレ日本の調査では、子どもだけでなく購入した親も一緒に飲む「親子飲用」というケースも増えていた。「2011年と2018年を比較すると親子飲用率は1.6倍になった」(ネスレ日本広報)という。そこに今年7月のSNS上の発言があったことで一気に注目が集まり、品不足になったわけだ。

このような傾向を受けて30~40代女性のニーズは確実にあると判断。そのターゲット層を狙った商品として、2020年9月に1本当たり1杯分(15グラム入り)のスティックタイプ商品を新商品として投入していた。

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