新型コロナ、感染症と闘う「世界のプロ」の提言

國井修氏に聞くコロナ対策の現状とこれから

世界エイズ・結核・マラリア対策基金の國井修氏は「メディアやSNSでフェイク情報や扇動情報が広がり、多くの人に不安や恐怖を与えた」と指摘する(撮影:梅谷秀司)
新型コロナの第3波が世界的に広がり、欧米では部分的なロックダウンも再開、日本でもGoToの一時停止や営業の一部自粛要請を行っている。
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)は、三大感染症対策を中心に中・低所得国に資金を提供する国際機関で、2002年にスイスに創設され、3800万人の人命を救ってきた。設立の発端は2000年のG8九州・沖縄サミットだった。
同基金の戦略・投資・効果局長として世界各国を飛び回り、『人類vs感染症 新型コロナウイルス 世界はどう闘っているのか』の著者でもある國井修氏は、コロナ対策の現状と課題をどう考えているのか。

感染症報道には誇張やフェイクもある

――足元で新型コロナの感染者が再び拡大しており、GoToトラベルキャンペーンの一時停止や営業の一部自粛要請が出されています。

新規感染者数が指数関数的に増えて、重症者数、医療機関の集中治療室の病床占有率も増加しているので、対策を強めなければならない、とても重要な時期だ。このままだと感染爆発や死亡率の上昇も招きかねず、より厳しい措置が必要かもしれない。医療や介護施設でのクラスターも多く発生しており、致命率の高い高齢者や基礎疾患を持つ人を感染から守る対策を徹底する必要がある。

――新型コロナはどのような性格を持つ感染症なのでしょうか。

感染症の恐ろしさを示す指標に、感染力と致死力があるが、新型コロナよりも感染力や致死力の高い感染症もある。無症状の感染者を含めると新型コロナの致死率は1%よりも低いことがわかってきた。1000人かかっても3人死ぬかどうかという程度。エイズは流行の初期に致死率100%といわれ、今でも服薬しなければほとんどの感染者が死亡する。SARSの致死率は10%以上、MERSも30%以上と高い。

新型コロナでは平均で1人の患者が2~3人に感染させるが、はしか(麻疹)では20人近くに伝播することもある。例えば、難民キャンプで1人はしかの患者が出ると、瞬く間に広がって、多くの子どもの命を奪う。アフリカでは予防接種も受けられず、栄養失調も多い地域が多いので、死亡率はさらに高くなる。

ただ、新型コロナの怖いところはステルス攻撃だ。「風邪のようなもの。恐れる必要はない」と油断させている間にいろんな場所に潜り込む。医療機関や高齢者施設などに広がると、医師や看護師らの戦力を減らし、高齢者や基礎疾患のある人などを死に追いやる。症状の悪化が急激で、朝元気だった人が夜には呼吸困難に陥る、重症化して死亡するという怖さがある。

感染症は多くの場合、発展途上国の問題だったが、今回はむしろ先進国に広がった。メディアやSNSなどで毎日コロナの情報が飛び交うようになったが、中には誇大・誇張、フェイクや扇動もある。それが多くの人々に不安や恐怖、また一方で油断や隙を与えた。

東洋経済プラスの短期連載「コロナと世界」では、この記事の続きを無料でお読みいただけます。この記事と合わせて2本の記事を配信しています。

インタビュー(上)「コロナ対策の成否は総合的に見るべき」
②インタビュー(下)「感染症対策には産学官民の連携が必要」(12月11日公開予定)
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