豊田通商、業界順位にこだわらない決定的理由 時価総額で丸紅を抜いて商社業界で「5番手」

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時価総額では商社で5番手の豊田通商だが、貸谷社長は気にしていない。写真は2019年(撮影:梅谷秀司)
今年8月、アメリカの著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が日本の5大商社(伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)に投資したことが明らかになり、市場の注目を集めた。だが現在、日本の大手商社で時価総額ベースの「5番手」は丸紅ではなく豊田通商である。
同社は自動車関連をはじめ、再生可能エネルギー、アフリカ事業などを幅広く展開する。貸谷伊知郎社長に、なぜバフェット氏の投資対象にならなかったのかを聞くと「私なりにその答えを持っている」と述べた。

丸紅さんと比べるのはおこがましい

――2020年8月末に著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本の5大商社に投資していることが明らかになりました。豊田通商は投資対象には入りませんでした。

ニュースが流れた瞬間に、うちは入ってないんだなとわかった。まさか日本の商社株に投資するとは想像していなかった。ただ、商社株に注目が集まることは、日本の株式市場、経済にとってプラスだったと思う。

当社の経営企画室の担当者に、「なぜバフェット氏が投資されなかったのか勉強してみなさい」と言ったが、私なりにその答えは持っている。

――それは、どのような?

いろいろな要素があると思う。まず、純利益の規模が上位5社には入っていないし、他商社とは違い資源事業もほとんど手掛けていない。株の流動性もあったかもしれない。ほかの商社には保有比率10%を超える株主はいない(豊田通商株はトヨタ自動車が約2割、豊田自動織機が約1割を保有している)。

PBR(株価純資産倍率)でいえば、豊田通商は1倍を超えている(12月3日時点で1.14倍)。商社業界で現在、PBR1倍を超えているのは伊藤忠さんとうちだけ。どれが決定的な要因なのかはバフェット氏に聞いてみないとわからないが、複数の指標から総合的に決めたのだと考えている。

――今年に入り、時価総額では丸紅を抜いて、豊田通商が業界5位になりました。「ついに抜いたぞ」というような感想ですか?

丸紅さんは立派な会社なので、比べるのもおこがましい話だ。時価総額は最大のステークホルダーの1つである株主からの評価であり、期待値だと考える。様々な比較があっていいと思うが、特にこだわりは持っていない。

『東洋経済プラス』の連載「5大商社 次の一手」では、この記事の続きを無料でお読みいただけます。各大手商社のデータ分析や、キーマンのインタビューを掲載しています。
プロローグ/バフェット氏が目をつけた5大商社の現在地

インタビュー/豊田通商・貸谷伊知郎社長
「業界順位は気にしない。野武士集団でいたい」


伊藤忠商事「業態革新」へ異色の新組織

インタビュー/丸紅・寺川彰副社長
データ/「大赤字」で強いられた守勢

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インタビュー/三井物産・高田執行役員
データ/カギを握る「非資源」の強化
大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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