「パ・リーグ」が「セ・リーグ」より強くなった理由 球団経営やマネジメントの視点から「差」を分析

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日本シリーズを制し、抑え投手の森唯斗投手(手前)に抱きついて喜ぶソフトバンク捕手の甲斐拓也ら=25日、福岡ペイペイドーム(写真:時事)

今年の日本シリーズもパ・リーグ優勝チームである福岡ソフトバンクホークスの圧勝に終わった。ソフトバンクは4連覇。その強さが際立っているが、それとともにセ・リーグの劣勢が際立っている。

ここ10年の日本シリーズでは、2012年の巨人を除き、すべてパ・リーグのチームが制している。10年の通算成績は、パ・リーグの38勝17敗1分、ここ3年に限定すればパの12勝1敗1分である。

セ・パ両リーグの選手が、公式戦で対戦する「交流戦」は、2005年から始まった。今年は中止となったが、2019年までの15年間で、14回パの勝ち越しに終わっている。通算ではパの1098勝966敗である。

もはや「パ・リーグはセ・リーグよりも強い」が定説になった感がある。なぜ、ここまで決定的な差が開いたのか?

親会社の歴史の「差」

筆者は以前から「指名打者制(DH)」について言及している。NPBではパ・リーグがDH制を導入、セ・リーグは導入していない。アメリカでもDH制があるアメリカン・リーグがインターリーグ(交流戦)でDH制がないナショナル・リーグに勝ち越しているのだ。

また、セが「先発完投」にこだわり先発投手を重視するのに対し、パは「救援投手」を重視する。今回の日本シリーズでも、巨人はソフトバンクの「勝利の方程式」の前に屈したという面もあるだろう。

しかし、パ・リーグの優位はそれだけではない。経営やマネジメントのレベルでも、パはセよりも進化している。取材などを通してNPB各球団と折衝することもある筆者は、セ・パ両リーグの「体質」「文化」の違いをひしひしと感じるのだ。ここでは、経営やマネジメントに焦点を当てて、両リーグの差を論じてみよう。

NPBの前身である「職業野球」は、1936年に始まった。今年で84年になるが、創設当初に参入して現存している球団は、巨人、阪神、中日の3つ。すべてセ・リーグだ。1950年に2リーグに分立するが、この時点で参入したのが広島、そして1966年にサンケイ新聞から球団を引き継いだのがヤクルトだ。セ・リーグで平成以降に親会社が変わった球団は2012年にTBSなどから経営を引き継いだDeNAだけだ。

これに対し、パ・リーグで最古の球団は、1969年に毎日新聞社などから経営を引き継いだロッテだ。次いで1974年に日拓から引き継いだ日本ハム、1979年にクラウンライターから継承した西武、1988年に阪急から継承したオリックス、2005年にダイエーから経営権を引き継いだソフトバンク、同年に新球団を創設した楽天となっている。

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