大阪「くいだおれ太郎」が築いた強烈すぎる印象

飲食業は撤退してもキャラクターは残り続ける

大阪のステレオタイプなイメージは、実はメディアによって作られ広められたものかもしれません(写真:やまのん/PIXTA)
大阪人は面白くて当たり前、大阪といえばたこ焼き、熱狂的な阪神ファン、ドケチなおばはん……大阪に対してこんなイメージを持っていませんか?
大阪のステレオタイプなイメージは、実はメディアによって作られ広められたものだった?! 庶民的な部分ばかりに注目され、面白おかしく誇張されがちな大阪像。幻冬舎新書『大阪的 「おもろいおばはん」は、こうしてつくられた』ではその謎を解き明かします。

くいだおれ太郎の狙い

かつて、大阪の道頓堀では、「くいだおれ」という会社が外食のビルを手がけていた。1階から8階までの全階に、食堂や居酒屋、そして割烹店などを並べたビルである。2008年から、同社は飲食に関わるビジネスを停止した。それでも、多くの人は、「くいだおれ」の光景を、覚えている。

「幻冬舎plus」(運営:株式会社 幻冬舎)の提供記事です

記憶に焼き付いているのは、ビルの1階正面にあった人形のせいである。派手な衣裳に身を包み、太鼓をたたくその姿は、チンドン屋をしのばせた。「くいだおれ太郎」と呼ばれ、あの界隈でも目立っていたものである。

道頓堀を紹介するテレビの画面も、よくこの「太郎」をとりあげた。あのあたりを代表する街の顔にも、なっていただろう。いや、大阪そのものを象徴する、アイドルでもあった

今、「くいだおれ」は、外食産業から身を引いている。しかし、「太郎」のキャラクター展開はやめていない。さまざまな事業者に、マスコットとして貸し出すマネジメント業は、続けている。人形の訴求力自体は、失われていないということか。

「太郎」が道頓堀に初めてその姿を現したのは、1950年であった。まだ、ビルを建てる前、食堂が発足してまもないころから店先を飾っている。

チンドン屋風の人形に、まず引き寄せられたのは、当時の子どもたちであったろう。子どもが喜ぶあの店へ出かけ、家族みんなで食事を楽しみたい。そんな家族連れをいざなう務めが、「太郎」には託されていたと考える。

実は、同じ1950年に、東京でも銀座の不二家が、店先へ人形を置きだした。「ペコちゃん」である。ここでも、子どもを不二家へ誘い込むことが狙われた。高級洋菓子店であった不二家は、これで規模の拡大に乗りだしたのである。

それまでの飲食業は、子どもを主たる消費者としては、みなしてこなかった。外食は、大人だけの楽しみだったのである。だが、20世紀の中葉には、子どもへ狙いを定めた店が浮上した。子どもの言うことも聞いてやろうとする、戦後的な家族像にあわせた営業が。

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