中国アリババ驀進に国家の「待った」がかかる訳 テンセント含め、独占に当局が監督を強める

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デジタル大国となった中国に、日本は追いつくことができるのか(デザイン:小林 由依)

中国で毎年11月11日に行われる世界最大のネットショッピング商戦「双11(ダブルイレブン)」。同商戦を主催する中国のアリババグループは、今年の販売期間を11月1日~3日と同11日の2回に分散。予約販売期間も含めた11日間での取扱高(流通総額)は前年比26%増の4982億元(7兆7200億円)という史上最高の記録を達成した。

ピーク時には1秒当たり58.3万件の注文を処理したというからすさまじい。楽天の国内EC年間流通総額は3兆8595億円(2019年1~12月期)だから、わずか10日間余りでアリババは楽天の2年分の規模を売り上げたことになる。

アリババはじめ中国ネット企業の株価が下落

しかし、数々の記録を打ち立てたにもかかわらず、アリババの11日株価は前日比9.5%安(終値、香港市場)と急落し、香港版ナスダック指数とも呼ばれるハンセンテック指数の中で下落率トップとなった。ほかにもテンセント、京東(JDドットコム)、美団(メイトゥアン)など、中国のネット企業大手の株価はこの日、軒並み下落。一体、何が起きたのか。

『週刊東洋経済』11月16日発売号(11月21日号)の特集は「デジタル大国 中国」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

ダブルイレブン商戦が最も盛り上がる最終日直前の11月10日。中国の規制・監督当局である国家市場監督管理総局が、ネット企業の独占行為を監督強化する新たな指針(「プラットフォーム企業の経済領域での独占禁止ガイドライン」)を公開したのだ。アリババをはじめ市場シェアを急速に高めているネット企業による取引先への不当な圧力や消費者データの乱用などを防ぐ枠組みを設けるもので、11月末まで意見を公募する。

アリババグループやテンセントが展開するスマートフォンアプリはともに年間10億人以上が利用。1つのアプリからミニアプリと呼ばれる無数のサービスを提供しているのが特長で、モバイル決済やチャット機能だけでなく、フードデリバリーから行政手続き、オンライン医療まで日常生活で必要なサービスの大半を利用できる。『週刊東洋経済』11月16日発売号は、「デジタル大国 中国」を特集。「秒速」で進化する中国のデジタルサービスの全貌や現地で展開する日本企業のDX戦略を明らかにしている。

こうしたデジタル企業のサービスは今や中国の生活の隅々まで根を張る一方、熾烈な競争環境下で取引先にサービスの二者択一を迫ったり、国民のビッグデータを企業が占有したりするなどその弊害も見え始めている。これまで政府がグレーゾーンとして見逃していたデジタル企業の支配力を弱めようという動きだ。

政府による規制強化には、さらに伏線があった。11月に予定していたアントグループによる「史上最大のIPO(新規株式公開)」延期だ。アントはアリババが33%を出資する関連会社として、10億人超が利用するモバイル決済の「支付宝(アリペイ)」や金融事業を展開する。11月5日に香港、上海の証券取引所にIPOを予定し、345億ドル(約3.6兆円)と史上最大の資金調達を見込んでいた。ところが、前々日の同3日に突然延期が公表されたのだ。

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