バイデン政権で進むエネルギー政策の「大転換」

エネ研・小山堅氏に聞くバイデン氏の環境政策

日本エネルギー経済研究所の小山堅専務理事は「バイデン氏が何ができるのか、注視すべき」と語る(撮影:尾形文繁)
バイデン政権になればエネルギー・環境政策はどのように変わるのか。また、2050年に「脱炭素」(温室効果ガス排出実質ゼロ)を宣言した日本にどのような影響があるのだろうか。
国際的な石油・エネルギー情勢に詳しい日本エネルギー経済研究所専務理事の小山堅氏に聞いた。

メッセージと中身の乖離に注意

――バイデン政権で想定されるエネルギー・環境政策について、どのように注目していますか。

新政権から出てくるメッセージは相当変わるだろう。気候変動対策については、この問題に後ろ向きのトランプ氏から、しっかり取り組む姿勢のバイデン氏に大統領が代われば、アメリカの国内対策でも国際交渉などの対外政策でも振り子が大きく振れることは間違いない。

エネルギー政策に関しては、これまでトランプ氏はアメリカ経済の繁栄を支えてきたシェールオイル&ガス革命による「エネルギードミナンス」戦略を推進してきた。これに対してバイデン氏は、シェール開発の環境影響を考慮し、フラッキング(水圧破砕法による開発)について連邦所有地では認めない方針を示している。ここでもメッセージとしてはかなり違ったものがある。

さらに、オバマ政権のときにできたイラン核合意からトランプ政権は一方的に離脱した。バイデン政権になれば、合意に復帰する可能性も指摘されている。時間の経過でイラン問題は複雑さを増しているが、対イラン政策の変化は大きな注目点となる。

問題は、メッセージが変わるとしても、バイデン氏が実際に何をできるかだ。そこは注意して見たほうがいい。例えば、気候変動対策でもどれだけ優先的な政策として位置づけられるのか。今のアメリカでは明らかにコロナ対策や経済復興、医療保険が最優先事項であり、政治的な資源はまずそれらに振り向けられることになる。逆に最優先ではない課題については、対策がなかなか進まない可能性がある。

それに、大統領がどんなに声を上げてこの問題に取り組むと言っても、予算が必要なものは議会を通す必要がある。今回の連邦議会選挙では、下院は民主党が過半数を維持する見込みだが、上院は共和党が過半数を保って「ねじれ議会」が続く可能性がある。そうした中で気候変動対策が最優先事項でないとすれば、公約と実行する中身との間に乖離が生じるかもしれない。

シェールの問題にしても、民主党の環境派ら左派はフラッキングの全面禁止を主張している。中道派のバイデン氏は彼らとは一線を画しており、シェール革命の重要性もよくわかっていると思う。「金の卵を産むにわとり」を絞め殺すようなことはしないだろうが、関係閣僚人事など、今後の政策の行方はしっかり精査する必要がある。

この記事の続きはこちら。『東洋経済プラス』ではアメリカ大統領選に関する有識者のインタビューを掲載しています。
トランプなきトランプ主義が生き残った」(キヤノングローバル戦略研究所 宮家邦彦氏)
『バイデン不況』は起こらない」(みずほ総合研究所 小野亮氏)
対中強硬姿勢はトーンダウンする」(東京財団政策研究所 柯隆氏)
米中対立を日米関係の進化につなげよ」(早稲田大学 中林美枝子氏)
日本が警戒すべきバイデン政権の”本性”」(東京大学東洋文化研究所 佐橋亮氏)
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