6人殺害で死刑回避、「心神耗弱者は減刑」の難題 被害者や遺族は苦しみ続ける

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刑事裁判では心神喪失者の行為は罰せられず、心神耗弱者の行為は減刑される(写真:梅垣勇人)

5人殺しても、6人殺しても、死刑にはならない。そんな判決の確定が今年になって続いている。

前者は2015年3月、兵庫県の淡路島でいわゆる〝ひきこもり〟の男が、近隣の民家に相次いで押し入って住人5人を刺殺した事件。後者は、同年9月に埼玉県熊谷市でペルー人の男が見ず知らずの住宅に次々と押し入り、小学生2人を含む6人を殺害した事件だ。

いずれの事件も一審の裁判員裁判では死刑判決が言い渡されている。ところが、二審の高等裁判所は犯行時の「心神耗弱」を認めて死刑判決を破棄し、無期懲役とした。刑法39条には「心神喪失者の行為は罰しない。心神耗弱者の行為は刑を減軽する」とある。

「電磁波兵器で攻撃されていた」と主張

淡路島の事件では、被告人が医療機関への通院歴もあり、「電磁波兵器で攻撃されていた。犯行は、その反撃だった」などと主張していた。ペルー人の男は事件前に「ヤクザに追われている」と語るなど、誰かに追われているという妄想があったとされる。

熊谷の事件は、この9月に最高裁判所で無期懲役が確定。淡路島の事件は、今年2月に弁護側が上告したものの、検察側が上告を断念したことから、無期懲役以下の刑が確定している。裁判員裁判の死刑判決が覆るのは、これで7件となる。

残る5件のうち1件は、2012年6月に2人を刺殺した大阪心斎橋通り魔事件で、こちらも精神障害の影響を考慮して、死刑が回避されている。

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