欧州国際急行「TEE」、環境対策で驚きの復活構想 長距離列車の復権進む中で「21世紀版」構想浮上

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かつてヨーロッパの花形列車だったTEE。スイスとイタリアを結ぶ「ゴッタルド」などに使われたRAe TEE II形電車(写真:©SBB CFF FFS)

冬の到来を前に、欧州では新型コロナウイルス感染の再拡大が現実のものとなっている。そんなさなか、鉄道を取り巻く明るいニュースが流れてきた。

欧州連合(EU)の議長国を担っているドイツがこのほど、かつて好評を博したヨーロッパ国際急行、トランス・ヨーロッパ・エクスプレス (TEE)の21世紀版といえる「TEE2.0」を2025年までに立ち上げるという構想を打ち上げた。

理由について同国は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)削減を骨子とした気候変動対策が求められていることに加え、各国の高速鉄道網が拡大してきたためだと説明している。「TEE2.0」構想の狙いと内容を見てみよう。

環境問題で長距離列車が復権

かつての「TEE」の運行が始まったのは1957年。全車が1等車で、高級レストラン並みの食事が楽しめる食堂車を連結した国際列車として1970年代に全盛期を迎えた。だが、1980年代後半になると2等車も連結した優等列車のインターシティ(IC)運行拡大や高速列車の登場などにより、TEEは存在意義を失い消滅した。

その後、欧州全体が欧州連合(EU)の名で統合され、ヒト・モノの動きが自由化、国境を越えての経済活動が自由となる中、格安航空会社(LCC)が需要の高い大都市間や第三国の国内線に参入。その結果、長距離列車のシェアが次々と食い荒らされていった。

こうした要因が複合的に重なり、もはや「長距離列車の復権はない」と考えていた人も多かった。このタイミングで、全欧州が一丸となって鉄道網の再構築に乗り出すことになった背景には、環境問題への関心が高まる中「遠くに行くときは極力、鉄道を使おう」と考える人が着実に増えていることが挙げられる。

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