長崎新幹線で注目、九州の交差点「鳥栖」の岐路 長崎への分岐駅を誘致、鉄道の街として発展

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鳥栖駅は西側にのみ駅舎がある。九州のクロスロードとして機能する駅だが駅舎は意外にもコンパクトで、現在橋上化が検討されている(筆者撮影)

九州新幹線長崎ルートの協議が佳境を迎えている。「西九州ルート」とも呼ばれる同新幹線は、博多駅―鹿児島中央駅間を結ぶ九州新幹線(鹿児島ルート)を新鳥栖駅から分岐させ、長崎駅までを結ぶ構想だ。

以前から九州、主に福岡県・佐賀県・長崎県の3県知事や沿線の市町村長が国土交通省などと協議を続けてきた。しかし、長らく議論は平行線をたどってきた。合意形成が見られない理由は、新幹線が開業しても現行の特急と比べて時短効果が少ないことが挙げられる。

例えば佐賀県の鹿島市は、特急「かもめ」が玄関駅の肥前鹿島駅に1時間当たり1〜2本発着するが、長崎ルートが全通すれば、これらの特急は廃止される可能性が高い。市内に新幹線駅を設置する計画はない。同市や佐賀県から見れば、長崎ルート全通の代償は大きい。

すったもんだの末、2022年秋に長崎駅―武雄温泉駅間の暫定開業が固まった。だが、武雄温泉駅―新鳥栖駅間のフル規格整備については、佐賀県は反対姿勢を崩さない。メリットのない話だから、佐賀県が反対するのは当然の話でもある。

先進的だった肥前藩

歴史的な経緯を見ると、佐賀県は鉄道が内包する地域振興・経済発展といった力を知悉している県でもある。ゆえに、新幹線開業によって地域が被るデメリットを容易に甘受できないともいえる。

幕末から明治維新にかけて、佐賀県は開明派として名高い藩主・鍋島直正・直大父子の意向もあって新しい西洋技術を次々と導入した。肥前(佐賀)藩が西洋技術を吸収できた背景には、その位置関係が大きく関係している。

肥前藩は、海外との窓口でもあった長崎の警備を幕府から命じられていた。長崎を押さえることは、西洋との接点を持つことを意味する。そうした背景から肥前藩は他藩より西洋と接する機会が多く、西洋技術の威力を熟知していた。それが率先して西洋技術を吸収する風土を形成した。

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