マセラティがフェラーリとの決別で見せた本気 電動化を見据えた「MC20」が示す未来への挑戦

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「MC20」はモデナ、ニューヨーク、東京で同時に発表された(写真:マセラティ)

先だってその全貌が発表されたマセラティのニューモデル「MC20」は、CFRP製センターモノコックを採用し、新規開発のV6ツインターボエンジンを縦置きにミッドマウントした2座のスポーツカーだ。

「MC」とは「マセラティ・コルセ(マセラティ・レーシング)」の略称であり、このMC20は2004年、フェラーリ傘下時代に限定生産された「MC12」のイメージを引き継いだモデルであることを表している。

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MC12はフェラーリ「エンツォ・フェラーリ」の基本構造をベースとしたレーシング・モデル(公道走行仕様も25台販売)であり、マセラティのモータースポーツへの復帰宣言でもあった。当時のFIA GT選手権に参戦し、すばらしい成績を残すとともに、フェラーリ傘下における新しいマセラティのブランディングに大きく貢献した。

MC20は最高出力630ps、最大トルク730Nmを発揮する、100%マセラティ開発による新たなV6エンジン「Nettuno(ネットゥーノ)」を搭載し、0-100km/h加速は2.9秒以下、最高速度は時速325km以上というスペックを誇る。

新素材の贅沢な採用により車重1500kg以下という軽さを誇り、クラス最高のパワーウェイトレシオ2.33kg/psを実現。このスペックや動力性能は、約2倍の排気量を持つ純粋なレースカーであったMC12をしのぐもので、世界中のスポーツカー愛好家から高い注目を集めた。

グラントゥーリズモなどとの共通性を感じるリア回り(写真:マセラティ)

マセラティは、比較的コンサバティブなモデルをラインナップしてきたブランドだが、その中でもMC20は、かなり尖った存在といえる。また、量産モデルとしては「ボーラ」や「メラク」以来、50年ほどのブランクを経て誕生したミッドマウントエンジン車だ。

しかし、その背景をよく眺めてみるなら、それは単なるサプライズやギミックではなく、ブランディング、マーケティングの必然から誕生したアイデアであることがよく理解できる。そのあたりの背景を今回は分析してみよう。

独自性の復権

マセラティは、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)グループに属する長い歴史を持ったスポーツカーメーカーだ。1914年に創立され、オルシ家、シトロエン、デ・トマソといったマネージメントを経て、FCA(当時はフィアット)傘下となった。そして、1997年に同じくフィアット傘下のフェラーリのマネージメント下に置かれた。

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