「愛情ホルモン」が脳に与える無視できない影響 「小学校の先生の名前」を忘れない脳の不思議

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「愛情ホルモン」の受容体の密度は、生後6カ月から1歳6カ月までの間に、親など特定の養育者との関係性によって決まるといわれています(写真:kokouu/iStock)
脳科学者で、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍する中野信子氏と、ベストセラー著作を多く抱える行動経済学者の真壁昭夫氏が、共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書』を出版しました。
「成功者」の脳のなかで起こる現象や行動のポイント、さらには子育て・外見・人間関係といった多くの人が抱える悩みに対し、脳科学と行動経済学の観点から対処法を示しています。
本稿では、同書から一部を抜粋しお届けします。

2020年の新型コロナウイルス禍では、緊急事態宣言が出され、経済活動は大きく制限され、人々は家から出ずに時間を過ごすことを余儀なくされました。これから、自分の生活がどうなるのか、社会はどう変化していくのかがわからず、将来への不安も募って、社会不安も増大しました。

東日本大震災のときもそうでしたが、SNSなどを通じて、「フェイクニュース」が拡散されて、不安はどんどん広がっていきます。また、SNSでの個人攻撃も社会不安の状況下で先鋭化している、といった報道もありました。

こうした不安と隣り合わせの時代に、私たちはどのように子どもたちと接するべきなのでしょうか。中野先生と考えてみました。

体も脳も育てる脳内物質と虐待の関係

真壁:人間の性格は生まれながらにして持っている先天的要素と、「育ち」といった後天的要素、この2つで決まるといわれています。

いまの世の中を見ていると、インターネットの発展に伴って情報が氾濫し、さらにこれらの情報を自らの意思で取捨選択できるような時代になりました。つまり、後天的要素のほうが性格形成に与える影響が大きいのだと思います。

さらにいえば、だからこそ教育は重要だし、その人がどんな人に出会い、どんな影響を受けたか、どんな教育環境で育ったかということが、その後の人生を左右するといっても過言ではないと思います。

教育環境で見ると、経済的にも精神的にも余裕がある家庭で育った子どもというのは、どちらかといえば欲求に対してブレーキがかかりやすく、理性が働きやすい傾向にあると思います。臨床実験の結果を見ていても、そうした傾向が明らかです。

また、先天的要素と後天的要素で考えるのであれば、アクセルを踏む力は本能的な部分であるため、人間は生まれながらにしてこの力を持っているのではないだろうかと思うのですが、ブレーキを踏んで欲求を抑えることについては、後天的に学んでいくものではないでしょうか。

欲求をブレーキで抑えることができれば、何かしらの対価が得られるという成功体験を幼少期に積み重ねると、本能でもある欲求に対してブレーキをかけることが比較的ストレスなくできるようになる、そういう傾向があるように思いますが、中野先生はどうお考えでしょうか?

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