ワタミが「焼肉」へ大胆転換せざるを得ない事情 ウィズコロナ戦略で居酒屋の3分の1を新業態へ

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居酒屋→焼肉へと舵を切っていく戦略の狙いを探ります(東洋経済オンライン編集部撮影)

居酒屋チェーン大手のワタミが居酒屋360店舗のうち120店舗をこれから1年半かけて焼肉店「焼肉の和民」に業態転換をする方針を打ち出しました。新型コロナウイルスの影響で今年8月の居酒屋の売り上げは対前年42.3%(日本フードサービス協会調べ)と6割近く下落しています。

一方で焼肉店は85.6%(同)と9割近くまで回復しているという事情があります。そこでワタミでは居酒屋のうち主に郊外に立地する店舗を焼肉業態に転換しようというのです。

郊外型の焼き肉店チェーンへの対抗の意味もあるのか、食べ放題メニューも豊富に用意しています(写真:焼肉の和民ホームページより)

今回の記事のキーワードは「ウィズコロナ」。ワタミの渡辺美樹会長はコロナ後も居酒屋市場は従来の7割に戻らないと想定しているそうです。ウィズコロナ時代、仕事帰りに居酒屋で同僚と飲んで帰る需要は確かに減りそうです。そもそもリモートワークが増えるので世の中の需要構造は長期にわたって変わってしまうわけです。

ではなぜ焼き肉屋なのか? 2つの観点でウィズコロナ時代の飲食店の変化についてまとめてみたいと思います。

国内牛肉市場の需給が大きく崩れた?

まず1つ目の視点は和牛です。ワタミのニュースよりも少し前、2020年9月にトリドールが経営する丸亀製麺で5日間、数量限定の特別メニューが登場しました。「神戸牛すき焼きうどん(982円、税別)」と「神戸牛づくし膳(1618円、同)」です。

1000円を切る価格で神戸牛というのは外食産業の原価を知っている立場としては破格のメニューだと感じました。実際に食べに行きましたが、肉質に関して言えば高級店と遜色がない、すばらしい一皿でした。

吉野家では10月5日からやはり数量限定で創業以来初の黒毛和牛を使ったメニューである「黒毛和牛すき鍋膳(998円、税別)」を発売しました。従来のアメリカ牛を使った「牛すき鍋膳(648円、同)」も併売しているのですが、食べてみると黒毛和牛はやはり違います。部位としてはバラ肉を使っているとはいえ、一流のすきやき専業店の昼のランチと比べその味に違いはありません。

吉野家の場合もバイヤーの7年にわたる悲願のメニューだったそうです。実現した大きな理由は新型コロナで「国内の牛肉市場における生産と消費のバランスが適正でない状況」になったことが大きいようです。今年4月に話題になったように新型コロナによって接待需要が大幅に減ったことで黒毛和牛の在庫が大幅に増えてしまったわけです。

次ページアフターコロナでも居酒屋は7割しか戻らないとしたら?
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