住友商事、5大商社で唯一「赤字予想」の危機感

南部副社長が明かす「安定収益」に向けた具体策

メディア・デジタル事業について「収益の柱をより太くする」と南部副社長は述べた(撮影:梅谷秀司)
5大商社で唯一の赤字予想――。住友商事は2021年3月期に過去最大となる1500億円もの最終赤字見通しを出している。兵頭誠之社長は今後の立て直しについて、「メディア・デジタル、生活・不動産、そしてインフラ関連事業を拡充して、稼ぐ力の強化に取り組む」と強調する。
重点分野のひとつとして掲げるメディア・デジタル事業は2020年3月期に純利益383億円を計上しており、住友商事にとって安定的な収益源だ。中でも、日本最大のCATV事業者で住友商事とKDDIが折半出資するジュピターテレコム(ジェイコム)は、全国の多チャンネル契約世帯(768万世帯)の過半を占める。
住友商事はこのジェイコムの顧客基盤を生かし、展開領域を広げていこうとしている。具体的な「次の一手」について、メディア・デジタル事業部門長を務める南部智一副社長に話を聞いた。

 

――大手総合商社の中で住友商事だけが、今期(2021年3月期)は最終赤字見通しを出しています。何が問題だと考えていますか。

これまでの住友商事は一言でいえば、自動車関連とオイル&ガスなどのエネルギー分野が事業の中心を占めてきた。現在のセグメントだと、金属、輸送機・建機、資源・化学品の3事業が収益を上げて、その資源をリテールや不動産、メディア・デジタル事業に投じてきた。何十年もかけて育成してきたため、いまやメディア・デジタルや生活・不動産、インフラの3事業が金属など3事業の収益を逆転するぐらいになった。

今期は、金属や資源・化学品が落ち込む。当社はマダガスカルでニッケルの採掘から製錬までを行うアンバトビープロジェクトを手掛けている。このニッケルは二次電池のための重要資源だが、マダガスカル政府が新型コロナウイルスの影響で飛行機の往来を止めたため、当社もアンバトビーの操業を2020年3月末に止めると決断した。操業を止めたことでキャッシュの流入が止まり、(2020年度の第1四半期に)減損を計上するに至った。

金属や資源事業が苦戦する一方で、発電所のようなストックを長期で保有して収益をあげるインフラ事業は安定している。スーパーのサミット、ドラッグストアのトモズといった消費者の生活に必要な商品を扱うリテール事業にも追い風が吹いている。

これまで産業構造の変化が徐々に近づいていると理解はしていたが、新型コロナウイルスで変化のスピードが一気に上がった。タイムマシンに乗ったような感覚だ。

収益の柱をより太くしていく

――メディア・デジタル事業の足元の状況は?

住友商事グループを支えていくために収益の柱をより太くしていかないといけない。ジェイコムは数十年かけて大きなプラットフォームをつくってきた。現在、CATVや電力サービスなどの加入者は約554万世帯にのぼり、大きな収益を生んでいる。

足元は概ね堅調だが、一部でコロナによる影響が出た。ティーガイアは4~5月に営業時間を短縮した。だが、ここに来てリモートワークが増えたので「携帯のデータ通信プランの容量を増やしたい」などの需要もあり、顧客は戻ってきている。

ジュピターショップチャンネルはテレビショッピングを24時間生放送で放映していたが、制作現場のクリーニングや従業員の出社が一部制限されたことから生放送の時間を1日7時間に縮小した。現在は16時間にまで戻しており、売り上げは回復してきている。ジェイコムも堅調だ。家で過ごす時間が長くなっていることから、OTTサービス(ネットを介した動画配信など)や電力需要が伸びている。

本記事の続きはこちら。『東洋経済プラス』では「5大商社『次の一手』」としてキーマンのインタビューなどを掲載していきます。
【プロローグ】バフェット氏が目をつけた5大商社の現在地
【インタビュー】住友商事・南部智一副社長に聞く
【データ】住友商事「赤字見通し」が示す課題
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