中国・吉利汽車「新型プラットフォーム」の狙い クルマのスマート化で高度な自動運転実現へ

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吉利汽車は巨費を投じて開発した次世代プラットフォームで自動車のスマート化に備える(写真は同社ウェブサイトより)

中国の中堅自動車メーカー、吉利汽車(ジーリー)の親会社の吉利控股集団は9月23日、新開発した次世代プラットフォーム(車台)「SEA浩瀚」を発表した。同社は傘下の7ブランドの16車種以上に新型プラットフォームを採用する計画で、2021年に発売する第1弾の「領克ZERO」は高速道路上での高度な自動運転を可能にするという。

吉利控股集団のCEO(最高経営責任者)を務める安聡慧氏は、9月24日に財新を含むメディアの取材に応じ、新型プラットフォームの開発に180億元(約2783億円)の巨費を投じたと明かした。安氏はまた、未来の自動車は大型の移動スマート端末へと進化し、自動車業界は大規模な再編の時代を迎えるとの見方を示した。

安氏によれば、SEA浩瀚を採用する新型車は無線通信で車載ソフトウェアの自動更新を行う「OTA技術」の実装が可能だが、その詳細は明らかにしなかった。新型プラットフォームの自動運転機能は今後不断にアップデートを続け、2025年には一般公道上での無人運転の実現を目指している。

自動運転の覇権争いにファーウェイも参入

なお、吉利は自動運転システムの開発でアメリカのインテル傘下のイスラエル企業、モービルアイと提携しており、システムの“頭脳”に当たるプロセッサーにモービルアイの最新SoC(システムオンチップ)「EyeQ5」を採用する計画だ。自動運転向けSoCをめぐってはモービルアイとアメリカのエヌビディアが覇権争いを展開しており、中国の新興EV(電気自動車)メーカーの理想汽車は2022年に発売する新型車にエヌビディアの新型SoC「Orin」を採用すると公表している。

中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)も、自動車のスマート化をにらんだ研究開発に邁進している。自動運転技術に関しては大手国有自動車メーカーの北京汽車のグループ企業と提携。ファーウェイが独自開発したSoCを搭載する新型車を2021年から量産する計画だ。

本記事は「財新」の提供記事です

吉利の安氏はファーウェイの動きについてコメントを控えたものの、「伝統的な自動車メーカーは転換期のなかで多くの課題に直面している」と危機感を示した。自動車メーカーは既存事業向けの莫大な投資をまだ回収できていない段階で、自動運転技術のようなリスクを伴う新規事業を同時に進めなければならないからだ。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は9月24日

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