塩野義製薬、急がば回れのコロナワクチン開発

激しい開発競争でも手代木社長が重視すること

ワクチン開発で「社内のリソースマネジメントは簡単ではない」と述べた手代木社長(撮影:梅谷秀司)
感染症薬で国内トップメーカーの塩野義製薬。新型コロナウイルス感染症のワクチンと治療薬の開発を進めており、ワクチンは2020年内に、治療薬は2021年3月までに臨床試験を開始予定だ。
世界中でワクチンの開発競争は異例のスピードで進んでいる。すでに実用化間近の開発品もある中で、後発の塩野義に勝算はあるのか。
さらに、足元ではインフルエンザをはじめとした感染症にかかる患者が激減。新型コロナ予防が徹底されることによって起きた変化だ。「Withコロナ」時代の感染症薬市場で、塩野義はどう戦うのか。手代木功社長に聞いた。

ワクチン開発の反省点はある

――新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発はどのような状況でしょうか。

これまで治療薬を開発してきたインフルエンザやHIVは、ウイルスそのものを10年単位で調べてきた経験がある。抗ウイルス薬のデザインにはウイルスの性質を理解することが必須だ。だが今回の新型コロナはもちろん、SARSやMERSを含めたほかのコロナウイルスでも、学問的な追究は世界的にあまり行われてこなかった。

われわれの研究開発でも、当初想定していた人員や体制では治療薬やワクチン、診断薬ともに不十分だった。本来、ある程度ウイルスのことがわかっている状態から治療薬の開発に入るものなのでウイルスの基礎研究に会社としてはそんなに人を割いていない。

今回はウイルスそのものをゼロから調べるチームを早い段階からかなりの規模で作ったほうが、結果的には開発が早く進んだのかなという反省もある。とはいえ、ほかに進めなくてはいけないプロジェクトもある。HIVの研究者が急にコロナウイルスの研究を始められるわけでもない。社内のリソースマネジメントは簡単ではなかった。

――ワクチン開発では、臨床試験の最終段階まで進んでいるメーカーもあります。勝算はありますか? 

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを掲載しています。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

遺伝子配列がわかればデザインできるワクチンもあり、例えば、アメリカのバイオベンチャーであるモデルナが開発しているワクチンは40日間でデザインされたと公表されている。

すると一般の方々としては、「外国では1カ月くらいですぐ臨床試験が始まっているじゃないか、日本の会社は何をやっているんだ!」ということになる。

ただ、海外で進んでいるワクチンは、どの感染症でも実用化されたことのない技術が用いられている。未知の副反応(副作用)が起きるなど、安全性はどうなるかはわからない。一方で、われわれはいくつかある製法の中で、安全性においては今までの経験が応用できるものを開発している。

インフルエンザのワクチンと同程度の安全性が担保されているイメージをなんとなく持っている方が多いのかもしれない。だが、もしインフルエンザワクチン以上の頻度や重さで副反応が出るとなった場合、それは社会的に受け入れられないのではないか。そう考えると、焦って開発することはできない。

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