敷金・礼金ゼロ物件が減った部屋探しの実情

2019年度の賃貸契約者動向調査からわかること

一方、借主にとっては、敷金・礼金を含む初期費用が高くなると、住み替え自体が難しくなってしまう。この調査結果でも「部屋探しで決め手となった項目」として、30.9%の人が「初期費用<礼金・敷金・仲介手数料など>」を挙げている。家余りの今は借主が有利な市場なので、敷金・礼金を引き下げる傾向が続いている。その結果、敷金や礼金がゼロの物件が市場に多いというわけだ。

原状回復費用に伴う敷金返還トラブルが多いのはなぜ?

さて、敷金の役割からいって、退去時に何もなければ全額返還されるはずだ。しかし、現実にはそうはいかない。退去後に敷金が戻らないとか、敷金で不足する多額の原状回復費用を請求されたといったトラブルも多い。2020年4月の民法改正では、敷金が定義され、原状回復義務の範囲に関しても明文化された。それだけ、敷金返還のトラブルは多かったということだ。

借主に責任のない、通常の使用による損耗や経年劣化などについては、借主に原状回復義務がない。例えば、長く暮らせば畳が日焼けしたりするが、それは経年劣化なので、次の入居者のために畳を張り替えるのは貸主が負担すべきもの。家具を設置したら床に跡が付くのは通常の使用によるものなので、床の張り替え費用は貸主が負担すべきもの。といったことだ。

こうした費用まで借主に請求することで、トラブルになるケースが多いので、注意が必要だ。詳しくは、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公開しているので、ぜひ確認してほしい。

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

さて、「敷金・礼金がゼロゼロなら初期費用が安くて助かる」と思う人も多いだろう。ただし、敷金の代わりに退去時のハウスクリーニング費用という形で負担を求めていたり、賃料に少しずつ上乗せされていたりする場合もある。広告に大きく表示されている費用だけでなく、最終的にいついくら支払うかの総費用を確認して、そのうえで部屋を決めるようにしてほしい。

(文/山本 久美子)

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