アメリカの株価はいずれ一段と下落しそうだ 最新の雇用統計で先行き不透明感が高まった

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アメリカの最新の雇用統計の中身は良くない。もう一段の下落に備えるべきかもしれない(写真:ロイター/アフロ)

アメリカの労働省が4日発表した8月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比137.1万人の増加となった。

数字自体は事前予想の範囲内で、特にサプライズというわけではなかった。だが、2日に先行して発表されたADP雇用レポートでの民間雇用数は前月比42.8万人の増加と、7月に続き予想を大幅に下回っていた。弱気の数字に対する警戒感が高まっていたこともあり、4日の市場にはひとまず安心感が広がった。

前日の3日に800ドルを超える急落となったNYダウ工業平均も、買いが先行する形で取引を開始した。失業率が8.4%と、前月の10.2%から大幅に低下したことも好感されたと思われる。ただ、雇用の増加については、政府雇用が前月比34.4万人の大幅増となったことによって押し上げられた部分が大きかったことにも注意が必要だ。

「訳あり」の雇用増、他の経済指標も回復鈍化を裏付け

これは10年に1度行われる同国の国勢調査の調査、回収員の臨時雇用によることが大きい。そもそも34.4万人という増加数が、10年前の2010年5月以来の伸びだったことをみても明らかだ。民間の雇用だけに絞って見れば102.7万人と、予想を下回る伸びにとどまっており、雇用の先行き不透明感が払拭されたわけでは決してない。案の定、4日の株式市場は寄り付き後ほどなく下落に転じ、一時NYダウは2万8000ドルを割り込んだ。

他の雇用に関する経済指標を見ても、8月に入って回復基調が弱まってきたことが明確に見てとれる。1日に発表された8月のISM製造業指数は、総合指数こそ56.0と2019年1月以来の高水準をつけた。だが雇用指数は46.4と、14カ月連続で好・不調の分岐点とされる50を下回った。

また3日に発表されたISM非製造業指数も、総合指数が58.1から56.9に低下。雇用指数は47.9と前月の42.1から上昇したとはいえ、今年2月に50の節目を大きく割り込んで以降、50以下の水準で低迷したままだ。さらに、先月17日に先行して発表されたNY連銀指数でも、雇用数が7月の0.4から2.4にかろうじて回復したものの、週平均労働時間はマイナス2.6からマイナス6.8に悪化している。前月の20日に発表されたフィラデルフィア連銀指数でも雇用数は7月の20.1から9.0に、週平均労働時間は17.2から11.3にそれぞれ悪化した。

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