バフェット氏が5大商社に価値を見出した理由

割安、低リスクを考慮?さらなる投資の可能性も

そうした中、今回の日本商社株の取得については、わざわざプレスリリースで公表するという異例の形をとった。バフェット氏は約1年かけて5大商社の株式を取得。投じた金額は、バークシャー・ハサウェイが保有を明らかにする前の株価(8月28日)から単純計算すると約6600億円にのぼる。今後も「株価次第で最大9.9%まで株式を増やす可能性がある」と、バフェット氏側は示している。

バフェット氏が日本企業の、しかも商社株に手を伸ばしたのはなぜか。

これまで総合商社は、株式市場で高い評価を受けてきたとは言いがたい。伊藤忠商事を除く4社のPBR(株価純資産倍率)はそれぞれ0.7~0.8台で、割安株とされる1.0を下回る水準にとどまっている。

割安株に甘んじてきた理由の一つが、業態の特徴にある。「ラーメンからミサイルまで」といわれるように、総合商社は多岐にわたって事業を展開している。複合的な事業構造のため、投資家からすれば事業の全体像がつみにくく、企業の価値を評価するのが難しい側面がある。いわゆる「コングロマリット・ディスカウント」だ。

また、投資家の中には総合商社を資源銘柄と見る向きもある。資源会社の業績は石油・天然ガス、原料炭などの資源価格によって業績が大きく上下する。そのため、投資対象として避けられることもあった(「東洋経済プラス」では5大商社の実力をデータビジュアル中心に掲載しています)。

非資源事業を着実に拡大

だが、楽天証券チーフ・ストラテジストの窪田真之氏は、「最近の商社の業績については資源価格の影響を受けにくくなっている」と指摘する。2018年度は5大商社のすべてが高水準の利益を出し、うち3社が過去最高益に達した。「2015年度の資源安ショックによる業績急落を受けて、非資源事業を伸ばしてきた成果が出た」(窪田氏)。

2015年度は銅などの資源価格が大幅に下落し、三菱商事が1493億円、三井物産が834億円の最終赤字に陥った。この反省を生かし、各社は資源価格が下落しても赤字には至らず、利益を出せるような優良な資源権益への入れ替えを進めてきた。

同時に、非資源事業の強化に努めてきた。資源商社と称される三井物産は近年、ヘルスケア領域に力を入れている。アジア最大級の民間病院グループIHH社(マレーシア)に約2300億円を出資し、2019年3月に32.9%を保有する筆頭株主になった。三井物産は現在、病院運営から医師・医療専門職の派遣までヘルスケア領域に幅広く取り組んでいる。

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