「早生まれは不利」の研究に感じる違和感の正体 その"客観的事実"が人々に植えつける心理

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早生まれの子どもは本当に不利なのでしょうか?(写真:8x10/PIXTA)

早生まれの子どもは何かと不利で、30代前半でも所得の差などに表れるというショッキングな研究結果が発表されました。発表したのは、東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎教授です。

主な内容は次のようになります。

・早生まれの子は遅生まれより学力、体力、非認知能力などが低い
・早生まれの子は、学校の教師や友人と良好な関係を結べないと感じていることが多く、対人関係の苦手意識が高い
・早生まれの人は30~34歳の所得が遅生まれの人より4%低い

この研究に対していろいろな反応が出ていますが、心配になるのは「うちの子は早生まれだからもうダメだ」(ある親)や、「自分は早生まれだから人生終わった」(ある中学生)などの反応です。

「早生まれは損」という思い込みが危険なワケ

親がこういう思い込みをしてしまうと、ゴーレム効果によって子どもが実際にそうなってしまう可能性が高まります。ゴーレム効果とは、心理学の用語で「この人は見込みがないと思って接していると、相手は実際そのとおりになっていく」というものです。

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職場でも、上司が「この部下はダメだ」と思っていると、実際にその部下はダメになっていく可能性が高まります。

また、子ども自身がこういう思い込みをしてしまうのも危険です。というのも、「自分はダメだ」というセルフイメージができると、それが自己創造の目指すべき方向性になってしまう可能性があるからです。人間は自分自身を作っていく唯一の生物ですが、セルフイメージがその青写真になるのです。

人生は思い込みで決まりますので、「自分は頑張れる。できる」と思い込んでいれば、実際に頑張れますし、できるようにもなります。でも、「自分はダメだ」と思い込んでいれば、頑張る気にもなれませんし、当然できるようにもなりません。

このようなことにならないためには、「早生まれは損」というのは統計的な傾向性にすぎず、個人のあり方を決定づけるものではないということをはっきり理解しておく必要があります。

つまり、全体的な傾向はそうであっても、だからといって自分あるいはわが子がダメということにはならないのです。なぜなら、統計的な傾向性よりも個人差のほうがはるかに大きいからです。ここは非常に重要なポイントです。

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