池上彰が解説「総理大臣という仕事の基礎知識」 分刻みで予定をこなすハードな「役割」の実際

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8月28日突然の辞意を表明した安倍総理。「日本の総理大臣」の多忙な日々の動きと、「総理大臣という務め」の最低限の基礎知識を池上彰氏に、わかりやすく解説してもらった(写真:ロイター/アフロ)
先日8月28日午後5時に始まった会見で、安倍晋三内閣総理大臣は「職を辞することとなり、国民の皆様に心よりお詫びを申し上げます」と頭を下げた。任期途中、自らの体調不良から突然の辞意を表明した総理の顔には、疲れと無念の表情がにじんでいた。
安倍総理は、2007年の第1次安倍内閣に続く任期途中の辞任となったが、7年8カ月もの間、日本の総理大臣としての重責を担ってきた。日本国民の私たちはその重責が何であるか、「総理の仕事」、さらには「総理の立場」などについて、そもそもちゃんと知っていただろうか。
この記事では、「日本の総理大臣」の多忙な日々の動きと、「総理大臣という務め」に対する最低限の基礎知識について、新刊『イラスト図解 社会人として必要なニュースの読み方が5時間でざっと学べる』を著したジャーナリスト・池上彰氏に、わかりやすく解説してもらった。次の総理の動向を見ていくうえでも、きっとこの知識は役に立つはずだ。

総理大臣のスケジュールは「分刻み」

総理大臣は1日にどんなことをしているのか。それについては、新聞の朝刊に「首相の1日」や「首相動静」といったタイトルの記事が毎日掲載されています。これを読めば、前日に総理が何をしたかがわかります。

2020年7月15日の朝日新聞朝刊に掲載された「首相動静」をもとに、前日14日の行動を振り返ってみます。

【午前】9時54分、官邸。10時3分、閣議。15分、萩生田光一文部科学相、藤原誠文科事務次官。51分、高橋憲一防衛事務次官。11時37分、田中和徳復興相、末宗徹郎復興庁事務次官、福島浜通り地域の国際教育研究拠点に関する有識者会議の坂根正弘座長。

この日、安倍総理はまず総理官邸に行き、官邸内で閣議を開いていることがわかります。政府として何か大事な方針を決めるときには、この「閣議」を開きます。

【午後】1時5分、森山裕自民党国対委員長。菅義偉官房長官同席。2時50分、北村滋国家安全保障局長、滝沢裕昭内閣情報官、宮川正内閣衛星情報センター所長。(中略)4時33分、吉村洋文大阪府知事から新型コロナウイルス感染症への対応に関する要望書受け取り。菅官房長官同席。(中略)6時22分、西村経済再生相。59分、報道各社のインタビュー。7時13分、東京・富ケ谷の自宅。

安倍総理は内閣のトップであり、自民党の総裁でもありますから、省庁幹部のほか、自民党の国対委員長と会っていることもわかります。また、この日は新型コロナウイルス関連の予定もこなしたようです。

このように、総理大臣の1日の動きは、まさに「分刻み」のスケジュールで進んでいます。その立場上、やはりかなり忙しい毎日を送っていることがわかります。

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