カワウソの子、実はみんなカナヅチという衝撃 本能的に泳げるわけではない納得の理由

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カワウソは生まれつき泳げるわけではありません。では、親はどうやって泳ぎ方を教える技術を学んだのでしょうか(写真:Rixipix/iStock)  
身近なのに実は知らないことが多い植物や昆虫、動物の生きざま。今回は植物研究者の稲垣栄洋氏の新著『生き物が大人になるまで 「成長」をめぐる生物学』より、カワウソの親が、実はあらかじめ子どもに泳ぎを教える技術を知っているわけではない、という納得の理由を紹介します。

教え方さえ、学んで会得するもの

カワウソは、水中を素早く泳ぎ回って魚を捕らえることができます。魚を捕らえるためには、つまり、魚を上回る泳力が求められるということなので、カワウソがいかに優れたスイマーかということがわかると思います。ところが、このカワウソ、実は生まれつき泳げるわけではありません。お母さんに泳ぎ方を教えてもらわないと、満足に泳ぐことができないのです。

カワウソの母親は、子どもを水の中に引きずりこみます。そして、強引に潜らせたり、子どもの首をくわえて水の中をいっしょに泳いだりするのです。こうして母親は、子どもに泳ぎ方を教えていきます。

無理やり泳がされる子どもたちは少し気の毒にも思えますが、自ら泳いで魚を捕ることができなければ、カワウソとして生きていくことができません。そのため、教える母親も必死なのです。

このようにカワウソの子は親から「泳ぎ方」を学びますが、カワウソの母親は、「泳ぎの教え方」をどのようにして身に付けるのでしょうか。本能に備わっているものなのかというと、おそらく、そうではありません。

カワウソの子どもは、母親に泳ぎ方を教わります。そして、その母親を見て「教え方」もまた学んでいたのです。大人に成長し、親になったカワウソは、自分がしてもらったように子どもに教えるのです。

動物園で人間に飼育された動物は、上手に子育てができなかったり、子育てを放棄することがあると知られています。ちなみに最近では、動物園でも動物を繁殖し、増やすことも重要になっているため、園で生まれた動物もやがて自分の子を育てられるように、できるだけ子どもと親をいっしょに飼育したり、飼育員が親の子育てをサポートするようになっています。

つまり、私たち哺乳動物は、親もまた、親となるための練習が必要なのです。

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