アフリカが貧困イメージから抜け出せない理由 自立的な経済成長に必要なものは何なのか

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僕が次に研究したいと思っているのは、新たに鉱物資源が発見された国。西アフリカ諸国で近年油田開発が進んでいますが、技術もノウハウもなく、監督省庁もなければ人材もなしでスタートする国が依然としてあるわけです。以前話を聞いた際には、海外のローファームなどに政策から法律整備、プロジェクト計画まですべて丸投げしている状況でした。

残念なのは「真のリーダー」が出てこないこと

──投資対象として大規模農地の例が出てきます。ランドグラブ=土地収奪という言葉とともに。

『アフリカ経済の真実――資源開発と紛争の論理』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

新興国の需要増大など食料危機を背景に、2008年ごろから外資主導の農地開発が熱を帯びました。ただ批判の声が高まって、現状は縮小傾向です。土地を収用された地元小農たちはさらに貧しい生活に追いやられ、プロジェクトが失敗し撤退したケースでは、文字どおり収入ゼロ、森を伐採・開墾された後では炭焼きさえもできず自活手段がない。

日本政府がモザンビークで進めていた大豆・トウモロコシなど輸出作物用の大規模農地開発も、つい最近中止が発表されました。「完了した」という言い方だけど、事実上の中止です。やはり地元農民からの反発、反対運動を受けてのものだと思います。

──アフリカの自立というか、今後の経済成長のシナリオは?

執筆に当たって、何らかの解決策の提言もすべきか編集者と話し合いました。例えば、中産階級が育って消費拡大を牽引するアジアのような成長パターンが描けるか。僕としては期待薄なんじゃないかと思うんです。本格的な地場産業の発展に移行しつつある国は見当たらないのが率直な印象です。冒頭で挙げたモロッコにしても、僕の中でまだ確証はない。また、石油・天然ガス収益や資源収益に依存した経済成長は、実態の伴わない成長であり持続可能ではない。

非常に残念なのは、国と国民を引っ張る真のリーダーがなかなか出てこないこと。優秀な人材はアフリカから出てしまい、海外でのポストやビジネスチャンスを模索するうちに国へ戻らなくなることが多い。自国の発展を心底願う人が帰国し、国をよい方向に動かしていく好循環が加速していくことが必要です。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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