五大商社で唯一赤字、住友商事に山積する課題 不振が続くニッケル事業を立て直せるのか

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大手商社の第1四半期決算では苦戦が目立った住友商事(記者撮影)

新型コロナウイルスが襲い、総合商社大手はどこも2021年3月期の大幅減益が避けられない見通しだ。特に、業界4位の住友商事は業績悪化が著しい。

住友商事は8月7日に2020年4月~6月期の決算を発表。最終損益が410億円の赤字になった(前期は797億円の黒字)。新型コロナウイルス感染拡大の業績影響を見通せないとして、当初「未定」としていた通期業績予想を今回公表した。最終損益は1500億円の赤字となる見通しだ(2020年3月期は1713億円の黒字)。

会社計画通りなら過去最大の赤字となる。同日、都内で開催された決算説明会で住友商事の兵頭誠之社長は、厳しい業績について「社長として非常に重く受け止めている」と述べた。

大手商社は今年度の下期回復を想定

他の大手商社もコロナ影響を受けて業績が悪化している。もっとも、伊藤忠商事は繊維事業などでコロナ影響を受けているが、2021年3月期の最終利益で4000億円を確保する見通し。原料炭や自動車関連事業で業績を落としている三菱商事は前期の半分以下となる2000億円を見込む。三井物産は1800億円、丸紅が1000億円といずれも1000億円以上の最終利益を計画する。

各社はコロナ影響が徐々に緩和することを想定し、下期からの業績復調を見込んでいる。一方、住友商事は第1四半期の赤字(410億円)よりも通年で最終赤字が増えるとの見通しだ。今後も複数の事業で減損が発生する懸念があり、通期で最大2500億円の一過性損失が発生する可能性があるとしている。大幅な赤字見通しを出しているのは5大商社の中で住友商事だけだ。

住友商事の苦境が目立つ理由は、複数の案件で課題を抱えているからだ。最大の足かせ要因は、アフリカのマダガスカルで行っているニッケル生産プロジェクト「アンバトビー」である。

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