コロナ時代は「SDGsの落とし穴」に気をつけろ ベニオフCEOの志と日本企業の精神は同じだ

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2019年3月20日、世界経済フォーラム(ダボス会議)にて。左からマーク・ベニオフ氏、科学者のジェーン・グドール氏、U2のボーカリストのボノ、気候活動家のグレタ・トゥーンベリ氏、外交官で環境保護活動家のクリスティアナ・フィゲレス氏、SOMPOホールディングスグループCEOの櫻田謙悟氏、ミュージシャンのウィル・アイ・アム氏(写真:セールスフォース・ドットコム)
企業は、抜本的な社会課題を解決することで、経済価値を同時に増大できる。これは慈善や非営利の事業ではなく、本業としての経営戦略に組み込むことで初めて実現できる。
これは経営戦略論の泰斗マイケル・ポーター教授が提唱したCSV(共通価値の創造)という経営モデルである。CSVは、従来の戦略論を根本から見直す試みであり、世界的にも大きな影響を与え始めている。
名和高司氏は、経営コンサルタント、アドバイザーとして、30年にわたって数多くの企業変革に携わってきた。近年は、日本企業でのCSV経営の実践をめざして活動している。
名和氏が最近注目しているのが、世界最大級の顧客管理ソフトウェア企業のセールスフォース・ドットコムである。創業者のマーク・ベニオフ氏は、近著の『トレイルブレイザー 企業が社会を変える10の思考』のなかで、「社会貢献と企業の成長は両立する」と喝破する。
本稿では、名和氏がベニオフ氏の魅力と、日本企業への示唆を語る。

ダボス会議での光景

パンデミックの波が世界をのみ込み、ニューノーマルが定着しつつある。この新時代のスタートラインに立ち、企業は改めて根源的な問いに答えなければならない。そもそも自分たちは何のために存在するのか? そして、どこへ向かうのか?

『トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

もちろん、答えは各社が導き出さなければならない。しかし、その切り口には、いくつか共通の知恵があるはずだ。そして、未来志向の企業から、学べることも少なくない。本稿では、そのような未来を拓く経営のあり方を紐解いてみよう。

毎年1月の第4週は、スイスのスキーリゾート「ダボス」が、季節外れの熱気に包まれる。世界経済フォーラムの年次総会(通称「ダボス会議」)が開催されるからだ。最近のこの会議の中心テーマは「資本主義の終焉」である。だとすると、資本主義の先は何か?

上の写真をご覧いただきたい。2019年のダボス会議の一場面だ。真ん中にいるのが、スウェーデンの環境保護活動家グレタ・トゥーンベリさん(当時16歳)。ほかに著名な科学者と外交官(いずれも女性)、それに2人のミュージシャン。

そして、2人の経営者が映っている。セールスフォース・ドットコムの創業者マーク・ベニオフ会長兼CEOと、SOMPOホールディングスの櫻田謙悟社長兼CEOだ。

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