ジャフコ社長「今はベンチャー投資の好機だ」 リーマンショックとコロナ禍の決定的な違い

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ジャフコの豊貴社長は日本における「起業マインドが定着してきた」と述べた(記者撮影)
創業間もないベンチャー企業にとって、事業を軌道に乗せるための資金調達はまさに死活問題だ。過去の不況時にはベンチャーキャピタルの資金供給と需要(起業家)が減退し、厳しい環境が続いたこともあった。
国内専業ベンチャーキャピタルで最大手のジャフコはコロナ禍のベンチャー投資をどう進めようとしているのか。今後注目する業界や業種はどこか。豊貴伸一社長に聞いた。

ベンチャー投資にはむしろ好機

――過去の金融危機とコロナ禍を比較して、投資環境に違いはありますか。

(リーマンショックによる)金融危機直後はベンチャーキャピタル(VC)でアクティブな(投資活動を継続している)ところはもう本当に数えるほどしかなかった。それと比べると、今回は極めてポジティブだ。

資金の規模でいうと、100億円単位のVCなどは国内で何十社もある。300億円、500億円を超えているところも10社弱あるだろう。一時は相対的に過熱気味であったり、資金調達額がどんどん多額になっていたのが、いくぶん落ち着いてくるとみている。

だから、(他社の)みなさんは新規投資にネガティブじゃなくて、むしろいいタイミングじゃないかととらえられている。当社では私が(2010年に)社長になってからは厳選集中投資ということで、年間100社の投資を20社ぐらいにした。このぐらいの規模でやっていく分には、むしろ好機だ。

――どういう点でチャンスなのですか?

1つは、一般論として、こういう不況期はより強い会社が見えやすい。もちろんスタートアップなので、ほとんどの会社は売り上げとか利益とかのトラックレコードがない。数字で分析するのはなかなか難しいが、それでも、こういう環境の中では勝ち組とそうでないところが分かれてくる。

あとは、資金の需要と供給の関係で言うと、供給サイドで事業会社等の資金が多少はシュリンクする。私どもは攻めようとは思っているが、(どこも)慎重に投資先を選んだ中で攻めていくので、全体として(VC市場の)資金供給が多少は減る。

昨年の大雑把な数字だが、日本のスタートアップの資金調達金額はざっと4000億円。そのうちの6割の2400億円は事業会社の直接投資だった。一部はCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)も入っていると思うが、ピュアなVCは全体の4割、約1600億円だった。

この1600億円がおそらく2000億円ぐらいまでは(足下で)伸びている。では、2400億円あった事業会社の直接投資がどのぐらい減るのかというと、半分までは減らないだろう。

もし仮に半分に減ったとしても1200億円だ。そうすると(投資額全体で)4000億円が3200億円になる。VCの分が多少減っても、リーマンのときみたいに半分も、あるは7、8割も減るということはない。

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