「火星に生命は存在するか」への現時点での答え

史上初、NASA「火星サンプルリターン」始動

火星に生命は存在するのか?(写真:Pike-28 / PIXTA)
人類の宇宙への挑戦がまたひとつ始まった。日本時間7月30日、20時50分、NASAの火星探査機Mars 2020/Perseverance(パーサヴィアランス)が打ち上げられた。
目的は、火星のサンプルリターン。火星に生命が存在する証拠となる物質を探査し、地球に持ち帰ろうというプロジェクトだ。
このミッションには何人かの日本人技術者が関わっている。本稿では、そのうちの一人、NASAジェット推進研究所(JPL)の小野雅裕さんの著作『宇宙に命はあるのか』より抜粋し、火星ローバーの狙い、そして地球外生命体の大いなる可能性についてお届けする。

なぜ火星の土をめざすのか?

火星の土を地球に持ち帰ること。それを、「火星サンプルリターン」と言う。これまで火星サンプルリターンの構想は何度も持ち上がっては予算不足で潰えてきたが、ついにNASAはその一歩を踏み出した。その最大の目的は、火星に川が流れ湖に注いでいた約40億年前の命の痕跡を探すことだ。

サンプルリターンといえば、日本の小惑星探査機「はやぶさ」を思い出す人も多いだろう。はやぶさが持ち帰った小惑星の砂は月以外の世界から人類が史上初めて持ち帰ったサンプルだった。はやぶさの功績はどんなに強調してもしすぎることはない。NASA内でもHayabusa の名は非常によく知られている。

はやぶさは一台の探査機で地球・小惑星間を往復するミッションだった。火星は重力が大きいため、単一ミッションで行うには巨大な探査機が必要になってしまう。そこで、3つのミッションに分けて行う。

最初のミッションは2020年に打ち上げられたマーズ2020ローバーだ。過去の生命の痕跡を保存していると思われる場所まで走行し、ドリルで岩を削るなどしてサンプルを集め、試験管のようなチューブに密封する。30本から40本のサンプルを集めた後、ローバーはチューブを火星の地表に置いていく。

大事なサンプルを置きっぱなしにして大丈夫かと思われるかもしれないが、それを盗むような輩はいなさそうだし(いたら面白いが)、雨も降らず、大気が薄いため風に持ち去られる心配もない。

次のミッションはオービターだ。はやぶさのようにイオンエンジンを搭載し、火星到着後は周回軌道で待機する。最後のミッションは、MAVと呼ばれるハイブリッド・ロケットと、フェッチ・ローバーと呼ばれる小型ローバーをセットで火星に送り込む。着陸後、フェッチ・ローバーはサンプルが入ったチューブを回収しMAVが待つ場所まで戻ってくる。サンプルはMAVに移され、火星軌道に打ち上げられる。

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